東京都よろず支援拠点コーディネーターの金﨑です。今回は名著『ザ・ゴール』からみた事業者の課題について書いていきたいと思います。
『ザ・ゴール』は1984年に出版された、制約理論(TOC:Theory of Constraints)を説明した小説です。日本で発売されたのは2001年で、1984年から遅れること17年もの歳月を経て出版されました。その理由としてゴールドラット博士は1984年当時、国際競争力が高かった日本企業に、部分最適の改善に関しては超一級であり、それに加えて『ザ・ゴール』で説明される全体最適の手法を教えたら、貿易摩擦が再燃して世界経済に大きなダメージを与えるから、と述べています。
TOC(制約理論)の説明で使われるキーワードの一つが「ボトルネック」です。TOCの制約という言葉は、元々はボトルネックと言う言葉で表されていました。その名前が示す通りボトルネックは「瓶の首」という意味です。例えば砂時計をイメージしてみてください。砂時計の速さは瓶の一番細い部分で決まります。幅の広い部分がどんなに広くても、流れ落ちる砂の量は瓶の一番細い部分に依存します。
出典:Wikipedia「ボトルネック」より引用
TOCは「つながり」(依存)と「ばらつき」(変動)があるシステムや組織ではボトルネック(制約)の改善に集中することで全体最適化が達成出来るという理論です。それは何かに集中するというよりはボトルネックの改善以外のことには集中しないという理論なのです。
『ザ・ゴール』のあらすじ
主人公のアレックスは、機械メーカーであるユニコ社の工場所長として赴任してくるのですが、工場は慢性的な納期遅れで赤字状態が続いていました。そんなある日、工場を訪れた副本部長のビルから3か月以内に工場を立て直さないと経営会議でこの工場の閉鎖を提案するしかないと言い渡されます。
途方に暮れているアレックスを救ったのが恩師であるジョナとの再会です。ジョナはアレックスに、「ロボットを使って、工場の生産性は本当に上がったのかね」「従業員の数は減らしたのかね」「仕掛などの在庫は減ったかね」などの様々な質問を投げかけ、工場の窮状を見抜き、「真の生産性とは何か?」アレックス自身で考えるようにアドバイスを行います。
アレックスはジョナとの電話を通じて、様々な気づきを得、工場を改善していきます。その時ヒントになったのが息子に付き合って参加したボーイスカウトのハイキングでの出来事でした。一列に隊列を組んで歩く子供たちの足取りは速い子もいれば遅い子もいて、自然に隊列の先頭から隊列の最後尾までの距離が長くなってしまいます。中でも一番歩くのが遅いのがハービーという男の子です。隊列が進むスピードはハービーの歩くスピードに依存してしまいます。そうです、ハービーこそがこの隊列のボトルネックだったのです。
当初TOCは製造業向けの改善理論と思われていましたが、現在は様々な分野で活用されており、SCM(サプライチェーンマネジメント)の基礎にもなった理論として有名です。
どんな企業にも「つながり」と「ばらつき」があります。言ってみればどの企業にもボトルネックが存在するということです。貴方の会社のボトルネックは何でしょう?もし、悩んでいることがあったら、一緒に考えさせてください。ご相談は東京都よろず支援拠点まで。電話で簡単に予約が取れます。相談は何回でも無料です。