こんにちは。東京都よろず支援拠点 コーディネーターの大庭聖司です。
私は元システムエンジニアですので、システム導入を希望する事業者様からの相談をよくいただきます。そこで、今回はIT導入する上で私が見届けたトラブルとその原因、また、導入する際に専門家に相談することのメリットをまとめます。
■よくあるトラブル例1:無料でサポートされると思ったら高額請求が届く
ある飲食店A社に、「人材採用を無料でサポートします!」といったメールが突然届きます。内容をよく読んでいると、「弊社が運営しているポータルサイトに無料で求人広告を掲載しませんか」との内容。無料ならばこれはいい機会だと思い、A社はこちらを申し込みました。
しかし、A社社長はあとで契約書を読み直してみて違和感に気付きます。なぜか、「3週間後には有料契約に切り替わる」と書いてあるほか、デザイン料は別途お金がかかる、との記載が。営業時にはそういったことは一言も言っていなかったのに、契約書にはそんなことが書かれていたのです。A社社長は契約書のお金の記載を見落としてしまっていました。A社社長はこの問題に気づいてただちに解約を請求しました。
その後、営業してきた会社が運営しているポータルサイトを覗くと、そこにはほぼアクセスはゼロと思われるような中身が空っぽのポータルサイトでした。そこに記載されていた求人情報数はわずかで、A社をはじめ数社の求人情報が掲載されているだけ、というものでした。
A社は結局、張りぼてのサイトに求人情報を記載されただけで何万円も請求されてしまう、といった羽目になってしまいました。
■よくあるトラブル例2:ECサイトのデザインがイメージと違う
ある食品販売会社B社では、新規に通販事業を立ち上げることにしました。そのためにはECサイトは必須です。そこで、友人の紹介で制作会社を紹介してもらいました。友人いわく、ものすごく技術力が高くて納期も早いとのこと。安心して依頼しました。
ただ、初めてのシステム会社とのやりとりなので、システム会社にどういった依頼を出せばいいのかわかりません。そこで、マリンスポーツが趣味のB社社長は、自分のお気に入りのスポーツショップのサイトを見せながら、「このイメージで作ってほしい」と説明しました。
後日上がってきたサイトを見て、B社社長は「しまった!」と思います。それは、マリンスポーツのサイトを参考にしたために、青色の多いデザインとなっていたのです。青は一般に食欲をなくす色ですから、食品販売会社のECサイトのデザインとしては最悪でした。当然、デザインを作り直さなければなりません。結果的に、システム会社から追加のデザイン費用を請求されてしまいました。
■よくあるトラブル例3:謎のシステム管理料が毎月取られている
ある金属加工部品製造業C社では、新規に受注管理システムを作りたいと考えていました。同業に相談したところ、あまり経験はないけど、システム開発には長けている個人事業主がいる、とのことで紹介を受けました。
実績がないため、この個人事業主がどれくらい開発のスキルがあるのかはわかりません。そのため、一括でシステム構築料を支払うのは怖いもの。一方で、個人事業主としてもお金を支払ってもらえないと生活が成り立ちません。そのため、「毎月いくらか予算をつけてもらって、その範囲で開発しましょう」という形で合意、システム開発がスタートしました。
その個人事業主はシステム開発をきちんとやり切りました。スキルがあることがわかり、C社社長は一安心。そのシステムもほぼ出来上がって、あとは維持費だけか、と思っていました。
しかし、他のパッケージシステムの何十倍もするような高額の維持費の請求が毎月来ることに。結局高額すぎる維持費の金額交渉をめぐって個人事業主と争うことになってしまいました。
【システム関連はトラブルが多い】
これらに近い経験をしたことがある方はとても多いと思います。私自身もシステムやDX化の相談を受けることがありますが、その相談者の方はだいたいこんな感じで、何かしらのトラブルを経験したことのある会社ばかりでした。
システムというのは目に見えないものですから、事業者にとっては想像しづらく、なんとなく始めてしまうことが多い。その結果こんな感じでトラブルになってしまうというのが、私が普段から感じる感想です。
【トラブルが起きる原因は事業者側にも相当の理由がある】
そして、忘れてはならないのが、「トラブルの原因はシステム開発側ではなく、ユーザー、つまり事業者側にかなりの原因がある」という点です。
トラブル例の1番目は、明らかに悪意を持った事業者による攻撃であることから、事業者様は被害者といえます。ただ、この攻撃についても、少しでも立ち止まって契約書を眺めるとか、セカンドオピニオンを求めるということができればトラブルは止められたはずです。
(実際に、昨今は無料求人広告詐欺が横行しているようです。インターネット等で「無料 求人 広告 詐欺」あたりで調べていただけるとすぐにわかります)。
トラブル例の2番目は、冷静に考えて食品のECサイトを作るのに、マリンスポーツのサイトを参考にすることは明らかに事業者様のミスですよね。
トラブル例の3番目も、事前にきちんと契約書で開発費等をあらかじめ決めておくとか、設計書を作ってから開発を委託するといった当たり前の対処をしていれば事件は起きなかったはずです。
こんな風に、せっかく会社全体として「IT化を進めよう」「これからはDXだ!」と息巻いて進み始めたのに、一歩目で派手にこけてしまうから、「やっぱりITはハードルが高い」となってIT導入が遅れていくのです。
【だからこそセカンドオピニオンを求めよう】
システム開発会社であっても、システムを販売することを生業とします。そのため、どんなに親切なシステム開発会社であっても、トラブル例2のようにデザインの作り直しをさせるのであれば追加料金をください、と主張するのは当然ですよね。安く満足のいくIT製品を導入したいのであれば、依頼する事業者側が精度の高い要件を出す知識が必要になります。
ただ、忙しい事業者様にとって、ITの勉強をしているヒマはありません。だからこそ利害関係のない、我々のような専門家に相談をすることが大事なのです。よろず支援拠点の相談員が公的機関の立場として、中立的に助言させていただくことができます。
とはいえ、システムの導入は厳しいものです。自社で要件を出したり、初期データを整理したり、ユーザーテストといって、実際に事業者自身でシステムを隅々まで操作してみるといったさまざまな工程があります。これを乗り越えてIT化・DX化を実現するには根性は少なからず必要になります。それを乗り越えた上でトラブルになってはたまりませんからね。成功確率を高めるためにも、ぜひともよろず支援拠点をうまく使ってください。
私のようなシステムエンジニア出身のコーディネーターもいますし、万が一トラブルになってしまったとしても弁護士のコーディネーターもいます。お気軽に当拠点をご利用ください。みなさまのご相談をお待ちしています。