経営者応援ブログ

小規模、中小企業だから有利な市場を研究してみよう

中小企業

東京都よろず支援拠点 チーフコーディネーターの金綱 潤です。

いつも本ブログ、愛読いただき誠に有難うございます。

「小規模事業者、中小企業者だから有利な市場を研究してみよう?」と言われても「そんなことあるの?」等ピンとこない方も多いと拝察します。

何故ならば、自由競争市場の我が国において、ヒト、モノ、カネ、情報、ノウハウが豊富な大企業に比して、あらゆる点で、小規模事業者、中小企業者の皆様は有利な市場を見つけることが難しくなっていると思うからです。

しかしながら、「そんな市場があるコト」を先ずお伝えして、皆様に自信を持っていただくことを念頭にブログを書かせて頂きました。

何故、小規模事業者、中小企業者の方が有利なのか?

【図表1】にありますように、日本には、約3,589千社の企業があり、その内、小規模事業者を含む中小企業者数は、その99.7%に当たる約3,578千社の事業者さんが存在しています。 また、中小企業全体で約3,200万人の方が雇用されており、これは、日本の従業者の約7割が中小企業で雇用されている計算になります。【出典:平成28年経済センサス活動調査】

【図表1】全事業者に占める中小企業者数、従業員数

出典:中小機構ホームページ「日本を支える中小企業」

経済の停滞が叫ばれて久しい日本経済ですが、GDPではアメリカ、中国に続く第三位の4,233,538百万US$を稼ぎ出している日本経済の担い手は大企業ではなく、皆様方、中小企業者さんであることをご理解下さい。

そうした背景もあり、我が国では、中小企業基本法の政策理念の中に「多様で活力ある中小企業の成長発展」を提示しており、この実現のために、独立した中小企業者の自主的な努力を前提としつつ、

1.経営の革新及び創業の促進、

2.経営基盤の強化、

3.経済的社会的環境の変化への適応の円滑化、の3つを政策の柱としています。

そして、この基本方針の元、国、地方公共団体、商工団体、支援機関、金融機関でも様々な配慮が行われています。

また官公需における中小企業・小規模事業者の受注機会の増大を目的とした、「平成29年度中小企業者に関する国等の契約の基本方針」においては、中小企業、小規模事業者向けの契約の割合を55.1%以上を目標にすることが明記されています。

そもそも官公需とはどう言う意味でしょうか?

国や独立行政法人、地方公共団体等が、物品を購入したり、サービスの提供を受けたり、工事を発注したりすることを『官公需』といいます。【出典:中小企業庁HPより】

2:具体的に有利な市場(経路、販路、対象市場)

それでは、何処が具体的に有利なのか?について幾つかお話します。

【図表2】

出典:筆者作成

【図表2】に在りますのように、敢えて、小規模、中小企業者でないと「エントリー出来ない」市場は実はそこかしこにあります。

ここでは紙面の関係もあるので、図の①の官公需市場に絞り解説します。

1. 官公庁の需要市場

昭和41年に内閣は、官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律(昭和四十一年法律第九十七号)第二条第一項第三号及び第四号並びに第二項の規定に基づき、この政令を制定しました。その内容はその後、年々時々の流れに応じて改定しています。

2023年4月25日には、

「官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律」に基づき、官公需における中小企業・小規模事業者の受注の機会の増大を図るための措置事項、中小企業・小規模事業者向け契約目標などを定める「令和5年度中小企業者に関する国等の契約の基本方針」(以下「基本方針」という。)を閣議決定しました。

今年度の基本方針では、中小企業・小規模事業者向け契約目標は、国等全体として引き続き61%、新規中小企業者向け契約目標は、3%以上と設定しました。

また、スタートアップを含む新規中小企業者の受注機会を増大させるため、その実現に向けた施策として、公募手続の電子化の推進、スタートアップが提供可能な新技術及び新サービスについての情報提供などの措置を盛り込みました。【出典:経済産業省HPより引用】

つまり、新規参入をこれから検討されている事業者さんにも開かれている市場とも言えます。事実、入札市場にチャレンジして2年以内で1件以上の成約にこぎ着けた事業者さんは、8割に上るとするアンケートデータもあります。

3:具体的なアプローチ方法と留意点

入札方法は一般的に図表3のように4つに分類されます。

昔は、指名競争入札、随意契約の割合が多かったために、「入札=閉ざされた世界」と認識される方も多かったですが、今では赤い破線で囲んだ一般競争入札と企画競争入札が入札市場26兆円の約6割強の15兆円を占めています。

年間のスマホの販売市場規模が13兆円であることを考慮すると凄い市場であることが分かると思います。しかもこの市場は他の市場と違い、比較的安定した市場の特徴がありますので、安定的な収益源を獲得したい事業者の皆様にとっても「魅力的な市場」だと思います。【出典:中小企業庁:官公需施策 (meti.go.jp)】

【図表3】

出典:筆者作成

しかしながら、そうは言っても具体的な方法やアプローチ方法が分からないと言う方も多いと思いますので次章でその解説をします。

4:事業者さんにとっての課題

公募入札には、様々な要件、条件、制約等が予め付されている特殊な市場です。

それだけに小規模、中小企業の皆様にとってチャンスも多い市場とも言えますが、その反面、特殊故に様々な課題があります。

1)対象機関毎に参加資格が異なることが多い

大まかに分類すると

【図表4】

【引用:平成23年 中小企業庁 官公需契約の手引き】

全省庁とは、国土交通省、文科省等の中央省庁及びその関係団体のことを指します。

地方自治体とは、東京都、武蔵野市、千代田区、大島町等、所謂、市区町村各々を指します。

外郭団体とは、中央省庁の関係機関とは別に中央競馬会(JRA)のように政府全額出資の公共性の高い機関の事を指します。

ですので、全省庁統一資格を取得すれば、参加資格の面では、一応入札にエントリー出来ることになります。

一方、地方公共団体に関しては、上述したように東京都庁の入札資格を取得したからと言って、武蔵野市役所の入札資格を取得したことにはならず、対象機関毎に別個、資格を取得する必要があります

2)業務分類毎に入札参加資格が異なる

全省庁統一資格の保有者とは、正確には、全省庁統一資格物品の販売及び役務提供

保有者と言います。つまり、入札可能な業務内容は、この2業務に限定されていることになります。

ですので、物品の販売及び役務提供以外の物品の製造や、買い受けの資格が取得出来る訳ではありません。別個、取得要件を確認した上で、申請する必要があります

3)自社に適した案件を探すのが面倒臭い。難しい

1)2)を読まれて、やはり「面倒くさいな・・」と思われる方もやはり多いかと思います。

例えば全省庁統一資格を取得したとしても「いつ、どの機関の、どんな案件に応募出来るのか?を調べるのは、個々の省庁、関係団体毎に公開されるので大変難儀します。

又、その表記の仕方もある団体はHPの小さなタブの中に「情報公開」「調達情報」「募集」等の表現で示されているものもあり、場合によってはサイト内検索でやっと該当箇所が見れる場合もあります。つまり機関毎に公開する表現が違うことで非効率な面も否めません。ですので近年では、関連情報を一括で取り纏めて、事業者の求めに応じて、自社の要望に沿う案件の検索サービスを提供している民間事業者も在ります。

しかしながら、中小企業庁が公開している官公需契約の手引き(平成30年度版)に依れば、例えば東京大学からは平成29年度一年間に発注された契約実績内容は【図表5】のように

【図表5】

工事を除く部門で小規模、中小企業者との契約金額が過半を超える実績をあげています。

又、他の省庁の実績を診ても、中小企業者が大健闘していることが診てとれると思いますので、めげそうな気持ちを持たれた方でも、挑戦しがいのある市場であることは分かって頂きたいと思います。更に中小企業向け契約金額目標も年々増加している傾向が続いています。

4)情報通信の方法に制約がある。

現在、多くの入札では電子申請の方法が採用されており、そのため、専用端末やカードリーダー等の設備投資が必要になります。

又、役所相手の連絡では、未だにメールではなく、電話、FAX等での情報のやり取りが求められることがありますのでご留意下さい。

5)書類が複雑、難解・・

図表6に入札~落札までの基本的な流れとポイントについて纏めてみました。

【図表6】官公需市場への入札の流れ

出典:著者作成

多くの事業者が挫ける原因に書類名称の難解さ複雑さがあります。

例えば、公示書と言うのは、入札案件の簡単な説明書類ですが、仕様書はその案件の詳細な業務内容について説明されている書類と言う意味です。ご存知でしたか?

しかしながら、公示書には案件入札に必要になる資格種類、入札場所、入札日、入札場所、参加条件、仕様書等説明書交付等の情報も含まれており、しっかり内容を確認しないと入札そのものが出来なくなってしまいます。

また仕様書には、案件の公募目的、趣旨、狙いや具体的な業務内容や成果物提出方法や注意事項も記載されているので、個々の案件毎に内容を正確に把握し対応することが求められていますので、ご注意下さい。

また、いざ、入札に必要な書類提出に関しては、公示書、仕様書の内容を踏まえた内容になると同時に、見積書や提案内容について色々迷われることが多々あると思います。

そこで以下の2つのポイントも頭に入れてみて下さい。

 *過去の落札結果の公表データを確認する

役所等機関毎に過去の案件に対して、どの事業者が幾らで落札したか確認出来ますので、見積書作成等では是非、確認されることをお奨めします。入札市場では、毎年、同じ機関から同様の内容の案件が公募されることが多いからです。

 *説明会には参加しよう

機関、案件内容によっては説明会を別途開催することもあります。

公示書等で「この説明会で参加された方へ説明書類を渡します・・」等の表記があれば必ず参加されるようにして下さい。

これにより入札応募に必要な書類のイメージや内容が掴みやすくなってくるからです。

参加申込書、質問書、見積書等、必要書類は多岐に渡りますが先方から提供されるフォーマットに従い、必要内容を記載されて下さい。

書類提出後は結果の公表である開札、さらには契約締結‥と言う流れになりますが結果公表の仕方もメール、電話、現地での発表等、様々ですのでご留意下さい。

5:最後に事業者の皆様へ

ご一読有難うございます。慣れないもの、知らないコトは、誰しも最初は不安な気持ちになると思います。しかしながらその不安の中には「皆様方の希望や目標があるからだと拝察しています。東京都よろず支援拠点では、新しいチャレンジ、販路開拓やPR方法についても個々の皆さんの状況をお聴きした上、皆様と一緒になって作戦会議を開催するような感じでご支援しています。私たちは10年前から小規模企業者、中小企業者の皆様方の支援者であり、これからも応援団であり続けます。

気楽にその扉をお開け下さい。有難うございました。

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