こんにちは。東京都よろず支援拠点 コーディネーターの小松です。
今回は、ご相談を寄せられることの多いBtoCビジネスにおいて、事業者様が避けて通ることのできない消費者保護のキホンについて解説します。
■なぜ「消費者保護」なのか?
「消費者保護」という言葉を聞いたことがある方は多いと思いますが、そもそも消費者保護はなぜ必要なのでしょうか。
BtoCの取引(契約)では、事業者と消費者の間には、商品やサービスに関する知識や交渉力に大きな差があります。事業者側は、商品やサービスの内容を知り尽くしていますし、交渉にあたっても数々の経験や組織のノウハウをフル活用することができます。一方、消費者側は、商品やサービスを調べるにも限界がありますし、交渉に長けているわけではないことが一般的です。こうした知識や交渉力の差によって思わぬ損害を被る消費者が後を絶たなかったため、消費者契約法をはじめ、様々な消費者保護法制が整備されています。
■注意しておきたい主な消費者保護法制
BtoCビジネスを展開する事業者様は、少なくとも以下の法制度には気を配りましょう。
- 消費者契約法…広くBtoC取引に適用され、不当な勧誘による契約の取消や不当な契約条項の無効等を定めています。
(参考)消費者庁のホームページ
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_system/consumer_contract_act/
- 特定商取引法…訪問販売・訪問購入、学習塾やエステ等の特定のサービス、通信販売(インターネット販売を含みます)等の類型のBtoC取引に適用され、広告等の表示事項やクーリングオフ等を定めています。
(参考)関東経済産業局のホームページ
https://www.kanto.meti.go.jp/seisaku/tokusho/index.html
- 割賦販売法…一定の商品・サービスを一定の方法で分割払いとするBtoC取引に適用され、許可・届出制度や取引条件等に関する規制を定めています。
(参考)関東経済産業局のホームページ
https://www.kanto.meti.go.jp/seisaku/shotori/index_kappan.html
■消費者契約法のキホン
これらの法制度のうち、BtoC取引に広く適用される消費者契約法の基礎知識をお伝えします。
①不当な勧誘による契約の取消
事業者が消費者の判断を誤らせるような勧誘を行って契約を成立させた場合、消費者から契約を取り消されるおそれがあります。
取消の対象となる勧誘の類型は多岐にわたりますが、一例を挙げると以下のものがあります。
- 不実告知…重要な事項(商品やサービスの内容、価格、支払方法等)につき事実と異なる説明をすること
- 断定的判断の提供…将来的に不確実な事項について確実であると告げること
- 不利益事実の不告知…消費者が不利益を被る事情を、故意又は重大な過失によって告げないこと
- 判断力低下の不当利用…高齢者又は判断力の低下した消費者の不安をあおって契約が必要だと勧誘すること
②不当な契約条項の無効
BtoC取引では契約書に記載があっても無効となる条項があり、一例を挙げると以下のとおりです。
- 事業者が債務不履行(例:契約違反)や契約不適合(例:欠陥)に基づいて損害賠償責任を負う場合に、これを免除する条項は、基本的に無効とされます。
- 事業者に債務不履行や契約不適合があっても消費者が契約を解除できない条項は、基本的に無効とされます。
- 消費者が違約金を負担するという条項がある場合に、違約金の金額や算定方法が事業者の平均的な損害を超える場合は、その分が無効とされます。
これらの規制は利用規約や約款にも及びますので、自社の契約書や利用規約が無効となっていないか、注意する必要があります。
■おわりに
消費者契約法は、2023年6月1日に改正されます。契約条項に関しては、解約料や解除の説明を設けるよう努力義務が定められるほか、責任免除の範囲が不明確な条項が新たに無効とされます。
当拠点では、私を含め弁護士のコーディネーターが所属しています。BtoC取引の契約条項に関してご不安のある事業者様は、ぜひ当拠点をご利用ください。