東京都よろず支援拠点 新橋事務所所属サブチーフコーディネーターの弥冨尚志です。
【東京都よろず支援拠点に「価格転嫁サポート窓口」が新設されました】
下請中小企業の価格交渉・価格転嫁を後押しするため、全国のよろず支援拠点に相談窓口が新設され東京でもこの価格交渉、価格転嫁についてのご相談対応を行っております。 原材料価格やエネルギー費、労務費などのコストが上昇する中、コスト増を下請中小企 業だけでなくサプライチェーン全体で負担し、雇用の約7割を支える中小企業でも賃上げができる環境を整備する必要性から中小企業庁が実施した令和5年3月の「価格交渉 促進月間」に関するアンケート調査(※1)が行われ、以下のような回答結果が公表さ れています。
【問:直近 6 ヶ月間における貴社と発注側企業との価格交渉の協議について、御回答く ださい】
- コスト上昇分を取引価格に反映するために発注側企業に協議を申し入れ、話し合いに応じてもらえた。もしくはコスト上昇分を取引価格に反映させるために発注側企業から協議の申し入れがあった。
- コストが上昇していないため、協議を申し入れなかった。
- コストは上昇しているが自社で吸収可能と判断し、協議を申し入れなかった。
- 発注量の減少やと取引中止を恐れ、協議を申し入れなかった。
- 発注企業に協議を申し入れたが、応じてもらえなかった。
- 取引価格を減額するために、発注側企業から協議の申し入れがあった。もしくは協議の余地なく一方的に取引価格を減額された。
- コスト上昇分を取引価格に反映するために発注側企業に協議を申し入れ、話し合いに応じて貰えた。
- コスト上昇分を取引価格に反映させる必要がないか、発注側企業からの声かけがあり、話し合いが行われた。
- コストが上昇していないため、協議を申し入れなかった。
- コストが上昇しているが、自社で吸収可能と判断し、協議を申し入れなかった。
- コストが上昇し、自社で吸収可能な範囲を超えているところ、発注側企業の方から「価格に反映させる必要が無いか」との声かけはあったが、発注量の減少や取引中止を恐れ、自社から協議を申し入れなかった。
- コストが上昇し、自社で吸収可能な範囲を超えているところ、発注側企業の方からの声かけも受けておらず、発注量の減少や取引中止を恐れ、自社から協議を申し入れなかった。
- コストが上昇しているので、発注側企業に協議を申し入れたが、協議にすら応じてもらえなかった。
- 取引価格を減額するために、発注側企業から協議の申し入れがあった。もしくは、協議の余地なく一方的に取引価格を減額された。
※1 経済産業省 「2023 年 7 月 10 日 ニュースリリース(中小企業・地域経済産業)」 より作成
【ホームページ】 https://www.meti.go.jp/press/2023/07/20230710003/20230710003.html
結論から言えば概ね、価格交渉に応じてもらい希望する価格で妥結したケースが増えてきています。もちろん、全く交渉に応じてもらえない先があるのも事実です。「ものづくり」中小下請け企業では国の方針もあり価格交渉は順調に推移しているように診て 取れます。しかし交渉は1回きりと言う事ではなく継続して行っていくことも重要です。
【交渉準備と実践までのプロセス】
中小企業庁から示されているプロセスでは、下記の3点を重視するように明示されていますが、特に2.の顧客との関係性を良好に保っておくことが一番重要です。1.の顧客の分散化は
※2 中小企業庁「価格交渉ハンドブック〜価格転嫁の実現に向けた交渉準備〜(初級 編)P.2」より引用
【ホームページ】 https://www.meti.go.jp/press/2023/07/20230710003/20230710003-1.pdf
直ぐに行えるものではありません。また3.の客観的なデータはどこまで揃えればいいのか自社も顧客もそのラインをどこに置けばいいのか逡巡する事もあります。しかし2.の顧客との信頼関係や⻑年の取引実績があればそこそこのデータ等でも交渉できる可能性 は高いと言えます。この関係性が良好であれば下記プロセスで進めるのが望ましいと言 えます。
※3 中小企業庁「価格交渉ハンドブック〜価格転嫁の実現に向けた交渉準備〜(初級編) P.2」より引用
それともう1つ大事なことがあります。無事、自社が望ましい交渉内容に終わった後です。その後に納期遅延や不具合品が多々発生すると今までの信頼関係が崩れてしまうことになって以降の交渉が格段と難しくなります。
【原価データ把握よりもっと大事なことが】
中企庁が6月にリリースした資料を基にご案内しています。ここでの交渉準備の中で1 点注意すべきことがあります。それは「原価の考え方」とそれをどこまで交渉用として開示していくのかと言う事です。
※4 中小企業庁「価格交渉ハンドブック〜価格転嫁の実現に向けた交渉準備〜(初級編) P.3」より引用
原価を単純化すれば 原料資材 + 労務費 + 消耗品 と言えます。中小企業庁のご案内通り原料資材の高騰を説明するのには確かに有効です。でも労務費まで提示しますか?
加工時間も一緒に提示しないとあまり意味がありません。すると「ムダ取りできていませんね?」 と別のツッコミが顧客から入り兼ねません。ここは自社内だけで把握。外には出さずムダ取りはじめ現場改善の検討に留めておくのが望ましいです。それと、もっと大事なことがあります。原価と言う事ではなく「価格」を意識する事が重要なんです。これが無 く原価計算に気を取られて原価高騰分を呑んでもらえれば良いという考え方は望ましくありません。
いわゆる変動費が今回、価格交渉で声高に言われているところです。しかし一番大事な 事は「価格をいくらで設定するのか」と言う経営の意思決定を日ごろから意識し絶えず 見直しを検討すべき事なんです。それは自社の目標利益を決めるところから始まります。 この「目標利益」の設定が無いまま原価計算を先に検討するのは好ましくないです。目標利益を獲得する為にどういうビジネス展開を考えるのか、と言う事です。それと固定費の考え方です。固定費とは目標利益を獲得するための「投資額」です。この説明はこの 紙面では割愛しますがこの目標利益の設定 ⇒ 固定費の決め ⇒ 変動費の動向を把握して価格交渉を行う事が事業の継続性に必要不可欠なプロセスでこれを繰り返し行う (PDCA を廻す)ことで大規模法人の上場企業等は毎年、「予算計画」と言う作業を繰り返して行っていますね。
【価格交渉を通じて目指すべきものは何か】
いま、確かに円安や資材高騰と言う異常事態を口実に変動費の一部について価格アップの交渉を行う事は急務と言えます。そしてそれは自社の「価格を見直す」と言う=経営 戦略の再検討・再構築を行うチャンスでもあるのです。原価分析も並行で行いつつ自社が目指すべき「利益」とそれに必要な投資(人材・設備)をどうするのか考えましょう。 そしてこの交渉の取組で何を目指すのか、ゴールの設定も大事になります。単に価格を上げる、下げるというレベルではなくサプライチェーンの強化・強靭化につながっていくような関係性のスパイラル的な発展が必要ではないでしょうか。 東京よろずでは、単に価格交渉の知識習得支援に留まらず事業者様の経営戦略の再考か ら一緒に伴走しながらご支援させて頂きますのでぜひ、この機会に東京よろずをご活用下さい。
完全予約制での相談対応のため、先ずはお電話でのご予約をお願い致します。
03-6205-4728
価格交渉のご相談の場合は決算書2期分と取引先リストをお持ち願います。
それでは皆様からのお電話お待ちしております。