経営者応援ブログ

ワーク・ライフ・バランスに取組みませんか~退職者を出さない最良の人事戦略~

東京都よろず支援拠点 コーディネーターの佐藤裕二です。
今回は経営者の皆さんに今だからこそ「ワーク・ライフ・バランス」に取組みませんかという提案をさせていただきます。

【ワーク・ライフ・バランス】

ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)が最初に話題になったのは「仕事と生活の調和推進官民トップ会議」において、2007年に「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」及び「仕事と生活の調和推進のための行動指針」が策定された頃になります。既に17年が経過していますが、厚生労働省が説明する「ワーク・ライフ・バランスとは、両者の時間的配分ではなく、仕事(ワーク)と仕事以外の生活(ライフ)の調和がとれ、双方が充実することをいう。」という定義を実現できている中小企業はどのくらいあるでしょうか。

【人材確保とワーク・ライフ・バランス】

人材の採用が難しいという中小企業が多いわけですが、私がお伺いする機会のある「ワーク・ライフ・バランス」を進めている企業では、苦労されている話にはなりません。「ワーク・ライフ・バランス」を進める様々な社内での取り組みが、採用、離職防止、エンゲージメントの向上に寄与しているようです。
このブログでは行政が「ワーク・ライフ・バランス」を推奨している施策と実際にお話を聞かせていただいた企業の話を紹介いたします。

【東京都ライフ・ワーク・バランス】

東京都が実施しているのは「東京ライフ・ワーク・バランス」認定企業制度です。

https://www.hataraku.metro.tokyo.lg.jp/hatarakikata/lwb/ikiiki/nintei/

生活と仕事の調和の実現に向けて、優れた取組を行っている中小企業等を「東京ライフ・ワーク・バランス認定企業」として表彰し、広くPRすることで、中小企業のさらなる取組を促進しています。合計13社程度の認定を予定し、認定企業の中から、大賞と優秀賞をさらに選定します。令和6年度で16回目を数え、これまでに延べ493社が応募し、165社が認定されています。

認定基準は社内の課題が明確化されており、目標設定がされていること、経営層を含め、社内全体で主体的に推進している取組であることなどとされています。
ハードルは高いですが、認定のメリットは、東京都が企業情報やその取組を東京都公式サイトやSNSに掲載し、周知してくれることです。また認定マークを自社サイトやパンフレット、名刺などに利用できます。さらに毎年開催されている「ライフ・ワーク・バランスEXPO東京」にて、認定企業のPRを行ってくれます。
入札(総合評価方式)の加点や合同就職面接会等に優先的出展できるなどのメリットもあります。

【ワーク・ライフ・バランス】

 中央区、港区、文京区には「ワーク・ライフ・バランス」推進企業認定事業があります。千代田区では「次世代育成支援行動計画策定」という名称で企業のワーク・ライフ・バランスを推進しています。都内の各自治体では、名称は違っても「ワーク・ライフ・バランス」や「働き方改革」をテーマにしたサポートがあるはずです。経営者の皆さんは自社のある自治体の施策を一度確認していただくと良いと思います。

【港区ワーク・ライフ・バランス推進企業認定事業】

港区を例にして、「ワーク・ライフ・バランス」推進企業認定事業を説明します。

https://www.city.minato.tokyo.jp/sangyousinkou/worklifebalance.html

港区は、仕事と家庭の両立支援や誰もが働きやすい職場の実現に向けてワーク・ライフ・バランスに取り組んでいる中小企業を認定し、その取組を応援しています。
認定の対象となる取組は次の3つの分野があり、1分野における取組から申請可能になっています。

(1)子育て支援分野 仕事と子育ての両立支援に積極的に取り組んでいる
(2)介護支援分野  仕事と介護の両立支援に積極的に取り組んでいる
(3)働きやすい職場環境づくり分野 長時間労働の削減、社員の地域での活動に従事するための制度を整える等、働きやすい職場づくりを積極的に行っている

そして前提となるのは法定時間外労働月45時間超過者、年360時間超過者がないこと、有給休暇取得状況が良く、直近1年間で休暇取得が5日未満の従業員がいないことになります。但し超過者数と最多時間数を示し、相当な理由があれば認められる場合もあります。

申請書には「ワーク・ライフ・バランス」の取組内容を記入します。目的・理念、ワーク・ライフ・バランスに取り組む前の課題やきっかけ等、社内推進体制、取組・制度等の社内への周知方法、従業員の意見の聴取方法、運用上の特長・工夫等、取組・制度等の利用実績(時間外労働、有給休暇の取得状況について等)、「ワーク・ライフ・バランス」に取り組んで良かったことが項目にあげられています。
そして分野ごとに取組のレベル診断シートがあり、A「既に推進している」B「これから推進したい」C「推進する予定はない」のいずれかに「〇」を付けます。A「既に推進している」が、申請する分野における全項目の4分の1以上であることが必要になります。

港区の認定企業となった場合のメリットが4つ挙げられています。

(1) 認定企業を区が広く PR します。
「広報みなと」や港区立産業振興センターホームページ等において、認定企業を紹介します。
(2) 契約制度で優遇します。
 ①入札 :加点対象となります。
 ②プロポーザル方式による選考 :一次審査において、加点対象となります。
(3) 企業のイメージアップになります。
「港区ワーク・ライフ・バランス推進企業認定証」を交付します。社内やホームページに掲げてお客様や就職活動中の学生等に PR できます。また、名刺などに区が提供する認定マークを入れて PR をすることができます。
(4) 人材確保・人材の定着につながります。
誰もが働きやすい職場環境を整えることにより、多様な人材の確保や長く働く人材が増え、企業の生産性の向上につながります。

【ワーク・ライフ・バランス推進企業の実際】

「ワーク・ライフ・バランス」を推進している企業でお話を伺いますと、まずは経営者自らが取組の実践に積極的であることです。経営者自ら育児休業を取得し、終業予定時刻に見まわりを実践しています。担当者と経営者が同席している場合など、和気あいあいという会社の風土が伝わってきます。

女性が多い、女性が活躍している企業が多いのも特徴的です。育児休業の取得のしやすい雰囲気になっていて、チーム制や複数担当制で業務が属人的になっていないのも重要な要素となっています(男性の育休取得のほうは実績ができてきた企業が少しずつ増えてきたかなという印象です)。

働きやすさでは、テレワーク・在宅勤務の推進が重要になっています。コロナ禍で仕方なく仕組みを導入したところが多いですが、この制度が社内の生産性向上と効率化とエンゲージメントの向上に寄与しています。現場作業の多い企業では難しいかもしれませんが、現場への直行直帰、WEBシステムでの勤怠管理、日報管理などで結果を出している企業も多いです。

【ワーク・ライフ・バランス推進のオススメ】

「ワーク・ライフ・バランス」に取組んでいる企業は採用に困っていません。社員が「いい会社」と思っているので、周囲・知人への声掛けで充分なのです。新卒採用でも港区のホームページで認定企業と知って応募したという人がいたと聞きました。必ずしも給与が高いからではないようです。

退職者が出て、穴埋めのために主力の社員に残業が増える。求人のために経費を使うのですが、応募が少ない。やっと来た応募者の研修に時間を使ったけど、すぐやめちゃったという経験はありませんか。そんな経験のある経営者の皆さんにお勧めなのは「ワーク・ライフ・バランス」に取組むことです。

退職者を出さないのが最良の人事戦略です。中小企業では残業の削減は無理と言わず、どのようにすれば可能になるか考えてください。DXによる効率化も寄与するでしょう。様々な国、都、自治体の中小企業向けの支援策も利用して、「ワーク・ライフ・バランス」の推進に取り組み、会社も従業員もハッピーな会社を目指してください。

 

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