こんにちは、東京都よろず支援拠点のコーディネーター戸田正弘です。
今回は、中小企業の経営者の方が事業承継計画作りの始めの一歩を踏み出すときの参考になればと思い、私が支援の現場で考案したツールを紹介させていただきます。
「事業承継計画作りに着手しようと思っても、どこから手をつければよいのかわからない」、というお声をよく聞きます。
事業承継は着手から完了まで10年掛かり、またはそれ以上掛かる場合が多く、自社の10年先20年先を構想する作業ですから、簡単ではありません。特に、人は還暦を超えると年老いていくのが嫌になりますから、自分が70歳、80歳になったときを考えるのを先延ばししがちです。そこにこの問題の難しさがあります。そこで、経営者の方は、ご自身だけではなく、親族も社員も誰でも等しく年老いていくという現実を、先ずは直視することから始めるのが良いのではないでしょうか。
某同族会社の親族の年齢推移表(筆者が事業承継支援の現場で2020年に作成した図表)
前掲の図表は、私が事業承継支援の現場で、ある同族企業の社長と後継者(社長の娘婿)に提案して作成して頂いたものです。
当時(2020年)社長は62歳、工場長(社員)は63歳、社長夫人(経理部長、年齢50歳前後、表に不記載)、社長の弟が56歳、後継者は33歳、社長の長女は35歳、孫が16歳、他に社員が数名のものづくり系の会社です。社長は体力の減退から後継者の成長を切望していましたが、経営の事を全く学ぼうとしないと嘆いていました。
一方で、後継者は、技術者として工場の作業に没頭していて、社長の意向に添う術がなく戸惑っていました。社長と後継者の気持ちがすれ違ったままでは何も始まらないと感じた私は、2人に対し100年企業を目指す計画を共同で構想するよう働きかけました。
当時65期なので、社長が97歳、後継者が68歳、孫が51歳になる2055年に第100期を迎えます。そこから、逆算していつまでに何をやったら良いのか考えましょうと提案し、共感を得ることができました。
年齢推移表を作成した2人からは、いろいろなアイデアが次々と出てきました。
社長が70歳になる2028年に後継者を社長にして自分は会長になる、それまでに工場長は引退するので、その後任の育成を急がねばならない、後継者が社長になる頃は他の社員も高齢化するので採用計画を考えねばならない、後継者が社長になる前に長女に経理部長の役を引き継がせねばならない、孫に100年企業を達成させるため大学は工学部に進学させよう、等々、ジグソーパズルのピースが揃って未来の絵姿が見えてきました。そこから事業承継計画に纏めるのはそう難しくありませんでした。
重要な関係者がいつ何歳になるのかという事実を一覧表(可視化)にするだけで、いろいろな気付きが出てくる筈です。計画作りを先延ばしになさる前に、10年先20年先を見据えた関係者の年齢推移表を作成してみてはいかがでしょうか。
東京都よろず支援拠点には、事業承継に詳しい中小企業診断士や弁護士、税理士が揃っております。事業承継の問題で悩んでおられる方はぜひ相談にお越しください。