経営者応援ブログ

原材料価格が高騰する中、利益減少のリスクを抑えながら値上げ・価格改定を行うには

こんにちは。東京都よろず支援拠点サブチーフコーディネーターの金子敦彦です。

近年、原材料価格や様々なコストが上がり、今までどおりの利益を上げていくのが難しい状況になっている事業者様も多いと思います。今回は、B to Cの店舗ビジネスなどの運営をされている事業者様に向け、商品・サービスの価格設定、値上げ等についてのお話です。

※B to Bの価格交渉については、こちらの ブログ記事をご覧ください。
【 価格交渉基礎編 】価格交渉は「価格を決める」ことから(2023年9月10日 経営者応援ブログ)

 

1.原材料価格高騰の転嫁状況について

原材料価格高騰の転嫁状況について、日本政策金融公庫が行った「食品産業動向調査(令和5年7月)」をご覧ください。

出典:「食品産業動向調査(令和5年7月)」日本政策金融公庫

この調査では、原材料価格の高騰に対し、「コスト増分を全額販売価格に転嫁」している、「コスト増分全額には満たないが販売価格に転嫁」している、「販売価格に転嫁していない」の三つの回答でのアンケートを行っています。直近の令和5年調査では、「販売価格に転嫁していない」と答えた先はほとんどいなくなっており、「コスト増分を全額販売価格に転嫁」という回答が増加している傾向にあります。しかし、依然として多いのは「コスト増分の全額には満たないが販売価格に転嫁」という回答であり、全額は転嫁できていない先が多いのが現状です。

2.支払い意思額とコスト・価格設定の関係

では、価格転嫁は増分全額行うべきかというと必ずしもそうとは言えません。以下の図をご覧ください。


お客様の支払い意思額(WTP)と価格、コストは、このような関係性にあり、価格の設定範囲はコスト以上でありお客様の支払い意思額以下ということになります。仮にコストを下回る価格設定を行ったらビジネスとして成り立ちませんし、支払い意思額を超えると購入されることがなくなります。値上げを行う際は、顧客価値を維持しながら企業利益を出せるラインで価格設定を行う必要がありますが、この支払い意思額が個人個人によって違う曖昧なものなので、価格設定は難しいと言えます。仮にコストが20%UPしたとして、価格を20%上げたらお客様の支払い意思額を上回る可能性があるので、値上げは慎重に行っていく必要があります。

3.原材料が高騰する中、利益を出していくには

では、原材料価格が上昇する中、利益を出していくにはどのようにしたらよいでしょうか。

まず行うべきは、高騰した原材料費のみではなく現状のコストを把握し、無駄が生じている部分があれば削減することです。これは、顧客価値低下にはつながらず企業利益を上げることができる可能性がありますので、リスクを抑えて取り組むことができます。現状の把握が重要です。

次に、価格改定(値上げ)になりますが、現状からの値上げを行えば顧客価値は削減するので、基本的に客数は減少するものと考えたほうが良いでしょう。しかし、商品1品あたりの企業利益は拡大しますので、客数減分の企業利益の減少を利益率が上がる分の企業利益の拡大が上回れば値上げは成功と言えます。また、価格設定を変更したことで今まで利用がなかった新規の客層獲得ができる場合もあります。これについても価格を上げたら実際の売上高や売上総利益を確認することが重要ですが、確認のスピードが早ければ早いほど、改善・方向転換も早く行うことができます。

4.Total Valueを上げてお客様とWin-Winに

先ほど、値上げをすれば顧客価値は下がると書きましたが、これは商品サービスに対するお客様の支払い意思額が同じという場合です。顧客価値を下げずに値上げをするには顧客価値を上げていく取り組みが有効です。顧客価値が上がる値上げでは、企業価値と顧客価値を併せた取引で生まれた総価値(Total Value)が上がります。Total Valueを上げ、企業価値を確保しながらこれまで以上の顧客価値を生むことができれば、Win-Winの関係ですので、客離れのリスクは低減されます。既存商品サービスの付加価値を上げたうえでの値上げが基本になりますが、その他、特にリスクが低いのは、今までの商品サービスの価格帯を維持しながら、付加価値と利益率を上げたこれまでよりも高価格な商品を開発し販売する方法です。この方法では、今までの利用者を維持しながら新しい顧客獲得をすることや、今までの利用者の利用単価・粗利益額を上げることができ、全体の売上総利益額を上げることが期待できます。

5.商品サービスの付加価値を上げるためには

では、どうやって付加価値を上げて顧客の支払い意思額を上げることができるのか。これについては、様々な方法がありますが、すでに販売している商品サービスの魅力、自社の利用している原材料、製造工程、商品サービスの提供方法、アフターフォローなど、改めて価値の洗い出しをしてみると良いと思います。ただ、自社や自社の商品サービスの価値については、提供している元である事業者様にとってはすでに当たり前に行っていることであり、何が他者と比較した強みになっているのかがなかなかわかりにくいと感じられるケースが多いのではないかと思います。自社の強みを知るためには、客観的な視点を持って診断することが有効です。商品やサービスの付加価値を上げたい事業者様は、是非東京都よろず支援拠点をご利用いただき、専門家の視点からの自社の強みを一緒に探索する事で、思っていなかったような強みを見つける事にトライしませんか?

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