こんにちは。東京都よろず支援拠点 コーディネーターの関です。
よろず支援拠点では、創業に関するご相談が多くありますが、個人事業主で創業するか、会社を立ち上げるか、立ち上げるとして、株式会社と合同会社のどちらがよいか、というのはよく聞かれる質問です。
今回は、そのうち、株式会社の設立を選択する場合に、知っておくと良いかも!という登記に関する新しい制度と定款に関する新しい運用をご紹介します。
1 登記に関する新しい制度(代表取締役等住所非表示措置)
株式会社を設立する場合、代表取締役の氏名及び「住所」が会社の登記に掲載されます(会社法911条3項14号)。この会社の登記は、原則として、利害関係の有無を問わず、誰でも閲覧することができますので、代表取締役は自宅の住所が公開されることになります。
このことが、創業にあたって株式会社を設立する際のネックになっていましたが、今般、商業登記規則が改正され(31条の3)、一定の要件の下、株式会社の代表取締役等の住所の一部を登記に表示しないことができるようになりました(ただし、市区町村まで(東京都においては特別区まで)は公開されます)。
この制度は、「代表取締役等住所非表示措置」といい、令和6年10月から運用が始まっています。
ただし、すべての株式会社の登記において代表取締役の住所が非表示となるのではなく、このような非表示措置を希望した方のみで、かつ、一定の登記(設立の登記、代表取締役等の就任の登記(重任の登記を含む)、代表取締役等の住所移転による変更の登記など、代表取締役等の住所が登記すべき事項に含まれる登記)の申請をする際に、「同時」に申し出る場合に限り、非表示となります。
従って、創業にあたって会社を設立する場合には、設立の登記申請と同時に非表示措置を申し出ることができますので、非表示を希望する方は、忘れないように申し出してください。
この非表示措置を申し出るには他にも要件があります。
また、株式会社の本店が、その所在場所(本店所在地)において実在すると認められない場合等一定の場合には、この非表示措置が終了し、住所が表示されるようになりますので、注意が必要です。
詳しくは下記サイトをご覧ください。
法務省「代表取締役等住所非表示措置について」
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00210.html
なお、合同会社の場合、「代表社員」も住所が会社の登記に掲載されますが(会社法914条1項7号)、株式会社と違ってこの非表示措置は適用になりませんので、株式会社と合同会社のいずれを選択するかの判断要素として、自宅の住所を公開するかどうかもポイントになるかと思います。
2 定款に関する新しい運用(定款作成支援ツール、48時間処理、72時間処理)
株式会社を設立する際には、定款を作成し(会社法26条)、公証人の認証を受けなければなりません(同30条1項)。なお、合同会社の場合には、定款の作成は必要ですが(同575条)、公証人の認証は不要です。
この定款の作成・認証に関する公証役場の新しい運用と、設立登記に関する法務局の新しい運用についてご紹介します。いずれも、【令和6年11月時点】の情報に基づき説明します。
(1)定款作成支援ツール
日本公証人連合会では、定款の記載例を用意しています。小規模な会社から大規模な会社まで規模に応じて書式があり、ワードファイルで書式をダウンロードでき、補足説明も用意されています。ご自分で定款を作成する場合には、こちらの書式例が参考になります。
日本公証人連合会「定款等記載例」
さらに、スピーディーに会社を設立したいというニーズにこたえるために、令和5年12月からは、定款作成支援ツールが公開されています。
こちらは、エクセルファイルをダウンロードし、必要事項を入力していくと、自動的に定款が完成するという優れものです。
ただし、小規模でシンプルな形態の株式会社を想定していますので、実態に合っていなかったり、最低限のルールしか規定されておりませんので、しっかりした内容の定款を作り込みたい方は、前述の書式例を活用するか、専門家にご相談することをお勧めします。
日本公証人連合会「[2]定款作成支援ツール」(2024年9月20日)
(2)48時間処理
定款を作成した後は、公証人の認証手続に入りますが、前述の「定款作成支援ツール」を利用して定款を作成した方については、令和6年1月から、原則48時間以内に認証手続を完了させる運用が開始されています。
この取組が利用できるかどうかは、公証役場の所在地域によって異なりますが、令和6年11月時点で、関東地方では、東京都内、埼玉県内、千葉県内、神奈川県内の全ての公証役場で利用できます。
詳しくは、下記サイトをご覧ください。
日本公証人連合会「[3]48時間処理」(2024年9月20日)
(3)72時間処理
さらに、公証役場と法務局が連携して、令和6年9月から、定款認証と設立登記を合わせて原則72時間以内に完了させる運用が開始されました。
前述の48時間処理の対象であることが条件となっていますので、定款作成支援ツールを利用して定款を作成し、48時間処理で認証手続を完了し、速やかに法務局に設立登記を申請すると、不備がなければ、定款の作成後、最短で72時間で設立登記が完了するという画期的な取組になっています。
ただし、この72時間処理が適用される条件を満たす必要があり、また、いずれの手続についても、事前準備を充分にしておく必要がありますので、ご注意ください。
詳しくは、下記サイトをご覧ください。
日本公証人連合会「[1]新たな取組の概要」→「③設立登記を含めた72時間原則」(2024年9月20日)
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