こんにちは。東京都よろず支援拠点 コーディネーターの小松恒之です。
2024年11月1日に、いわゆるフリーランス法(正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」)が施行されました。
施行以来、公正取引委員会は、フリーランス法に違反する疑いのある行為について積極的な情報収集を行ってきました。そして、2025年3月28日に、公正取引委員会が調査結果とそれに基づく指導の内容を公表しました。
https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2025/mar/250328_FL.html
今回は、この公正取引委員会の公表を踏まえ、フリーランスに委託する事業者の皆さんが特に注意すべきポイントを解説します。
なお、フリーランス法の概要については、馬場コーディネーターが解説しているこちらのブログもご参照ください。https://tokyoyorozu.go.jp/2024-12-25/
なぜ今、指導が?
公正取引委員会の今回の指導は、特にフリーランスとの取引が多いとみられる業種である、ゲームソフトウェア業、アニメーション制作業、リラクゼーション業、フィットネスクラブを対象に集中的な調査を行った結果として実施されたものです。
そして、これらの業種における合計45名の事業者に対し、フリーランス法第22条に基づく指導が行われました。
これは、法律が単に施行されただけでなく、当局が既に監視を強化し具体的な是正を求めているという明確なメッセージといえるでしょう。
何が指導の対象となったのか?
公正取引委員会が45名の事業者に是正を求めた指導は、主に以下の点に関するものでした。
- 取引条件の明示義務
- 支払期日の遵守
取引条件の明示義務
委託者は、フリーランスへの委託後直ちに、業務の内容、報酬額(計算方法)、支払期日、給付を受領する期日、検査完了期日などを書面または電磁的方法で明示する義務があります。
指導の対象となったのは、委託後に取引条件が明示されていない事案や、業務の内容、業務の実施場所、報酬額、報酬の支払期日、給付を受領する期日(納期)等の明示が不十分である事案でした。
この中で気を付けたいのは、「報酬の支払期日」の定め方です。
フリーランス法上、報酬の支払期日は具体的な日付で定める必要があり、「翌月10日まで」といった日付が具体的でない記載では足りないとされています。今回の指導では、こうした記載をしていた事業者も指導の対象となりました。
支払期日の遵守
委託者(※)は、フリーランスに対し、原則として給付受領日(役務提供日)から60日以内のできる限り短い期間内で報酬を支払う必要があります(なお、再委託の場合は一定の例外もあります)。
(※)2以上の役員が存在するか、又は週20時間以上かつ31日以上の継続雇用見込みのある従業員を使用する者
今回、単純に報酬の支払いが遅延した事案だけでなく、フリーランスの請求書の発行が遅れたことを理由に報酬の支払いが上記日数を超えた事案も、指導の対象となりました。
フリーランス法上、フリーランスからの請求書の発行が遅れたことは、報酬の支払いを先延ばしにできる理由にはなりません。
特に、契約書等で「フリーランスから請求書を受け取った日の翌月末日に支払う」という定め方をしている場合には、フリーランスからの請求書の発行が遅れると報酬の支払いが遅延し、フリーランス法に違反する可能性があるため、気を付けなければなりません。
これと同じ理由から、「委託者による検収完了日の翌月末日に支払う」といった定め方の場合にも、検収に要する期間が長期化すると報酬の支払いが遅延する可能性があります。
今後、他の業種ではどうなる?
今回の指導は特定の4つの業種に集中して行われましたが、公正取引委員会は、今後も違反の疑いのある事業者や業種について積極的な情報収集を続け、違反があった場合には迅速かつ適切に対処する方針を示しています。
これは、どの業種の事業者であっても、フリーランス法の対象となる取引を行っている限り無関係ではないということです。今回の指導を参考に、自社の取引慣行に問題がないか改めて確認することが重要です。
おわりに
今回の指導を「他山の石」とせず、自社の足元を見直す良い機会と捉え、フリーランス法への対応を万全にしましょう。
もし、自社でお使いの発注書、注文書、契約書といったひな形がフリーランス法に準拠しているか心配な方は、当拠点にご相談ください。
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