こんにちは。東京都よろず支援拠点 コーディネーターの土田哲です。
深刻な人手不足で倒産する企業が増え、貴重な人財の確保が課題となってきています。本日は、そのような厳しい環境を、デジタル化による生産性向上で乗り切ろう!というテーマでお話しさせて頂きます。
1.人手不足で倒産する時代
従来、倒産の原因は販売不振が最大の理由でしたが、コロナ禍後から人手不足を理由とする倒産が急増しています。
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出典:帝国データバンク公表資料から筆者作成
倒産件数全体:https://www.tdb.co.jp/report/bankruptcy/aggregation/g2-5yfk9w/
人手不足倒産件数:https://www.tdb.co.jp/report/economic/20250404-laborshortage-br24fy/
この図は、帝国データバンクの倒産に関する公表資料から私が作ったものです。青い棒グラフは各年の倒産件数の合計、赤い棒グラフは人手不足倒産件数、緑の折れ線グラフは人手不足倒産の比率になります。新型コロナウィルス感染症に関する行動制限が解けた2023年から人手不足倒産が急増していることが分かります。
コロナ禍後、企業活動が活発化したことで求人が増えています。人財確保競争の状況に勝てず、従業員を確保できない事業者の倒産が増えています。
2.より良い条件の仕事を求めて転職する時代
人手不足を測る指標は有効求人倍率が使われてきました。
直近の有効求人倍率は1.2倍前後で、この数字だけを見ると、採用活動を頑張れば、必要な人材を揃えられそうですが、いかがでしょうか?
有効求人倍率はハローワークを通した求人数・求職者数が基準です。しかし、戦力を期待する人材は、ハローワークでは採用が難しくなっています。
2025年5月23日の日経新聞では、4月の中途求人倍率が2.36倍であったと報じています(パーソルキャリア株式会社の発表として)。直近では一服した感ですが、3倍を超えていた時期もありました。
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出典:厚生労働省「令和6年版 労働経済の分析 -人手不足への対応-」
これらのグラフは転職者の推移を表したものです。コロナ禍後に転職が急増していることが分かります。
2023年は日本の労働人口の4.7%にあたる328万人が転職しています。転職理由は、「より良い条件の仕事を探すため」が最大になっています。
貴重な人財にこれからも働き続けてもらうためには、企業の体力を高め、より良い条件を提示していく必要があることが分かります。そのためにも、デジタル化による生産性向上が欠かせません。
3.デジタル化を成功させる3つの秘訣
貴重な人財をつなぎとめるためには生産性を向上させ、給与・環境両面の改善を続けていく必要があります。生産性向上にはデジタル技術の活用が欠かせません。
デジタル化と言うと、「どのようなシステムを入れるか」「どのベンダーに依頼するか」「予算をいくらにしようか」というように、いきなり個別具体的な検討に入る事業者さんが多く見受けられます。そのような進め方では効果が得られません。
ここでは、デジタル化を成功させる3つの秘訣をお話しします。
(1) 秘訣その1:経営者のリーダーシップ
デジタル化に最も重要となるのは、経営者のリーダーシップです。
デジタル化成功の第1の秘訣が経営者のリーダーシップと言うと、いささか拍子抜けするかもしれません。ですが、デジタル化で成功している企業の多くは、経営者がリーダーシップを発揮しています。
リーダーシップといっても、経営者自らデジタル技術に精通する必要はありません。デジタル投資の戦略と目標を定め、実際に取り組む従業員を後押しできれば十分です。
デジタル化は従業員も試行錯誤で取り組んでいきます。そのような頑張りをしっかりと見て評価することも、経営者のリーダーシップに含まれます。
経営者のリーダーシップと評価、これがデジタル化成功の第1の秘訣です。

経営者のリーダーシップのイメージ(ChatGPTで作成)
(2)秘訣その2:組織の成熟化
デジタル化成功の第2の秘訣が組織の成熟化です。
組織の成熟化とは何かと言うと、デジタルツールに慣れ組織全体で活用できるようになることです。
デジタルツール導入当初は、すぐに慣れる人もいれば、慣れるのに時間がかかる人もいます。デジタル化の一歩目は、個人への依存が高い状態となります。
やがて、デジタルツールに慣れた人が増えることで、組織内に広がった段階になります。
さらに、デジタルツールを使いこなすノウハウが蓄積されていくことで、組織が成熟化していきます。
このように、デジタルツールを使う人・組織の成長が、デジタル化成功の第2の秘訣になります。

組織の成熟化のイメージ(ChatGPTで作成)
(3)秘訣その3:支援制度の有効活用
デジタル化成功の第3の秘訣が、支援制度の有効活用です。
デジタル化には費用がかかりますが、中小企業の多くは資金に余裕がありません(資金面の課題)。
また、デジタル化に詳しい人材を抱えていない中小企業がほとんどです(人材面の課題)。
このような資金面・人材面の課題を支援してくれる制度が整備されていますが、その情報を知らない中小企業も多く見受けられます。
国や都道府県、市区町村が、デジタル化をきめ細かく支援してくれています。特に東京都の支援制度はとても充実していますが、私が紹介すると「初めて知った」と言う方が大多数です。
「デジタル化で生産性向上が必要」ということを認識していても具体的に始められない。そのような方は、ぜひ一度、東京都よろず支援拠点にご相談ください!