こんにちは。東京都よろず支援拠点 コーディネーターの荒谷司聖です。
■値上げをためらう本当の理由
「値上げを切り出したら関係が壊れるのではないか」
そう感じて、言うべきことを飲み込んできた方は少なくありません。特に長く付き合ってきた取引先ほど、この心理は強く働きます。
「迷惑をかけたくない」「できれば現状を維持したい」。どれも現場では自然な感覚です。しかし、その遠慮が会社を守ってくれるかというと、そうとは限りません。
むしろ、じわじわと会社の体力を削り続ける原因になっているケースを数多く見かけます。
■関係を守った結果、会社が消えた事例
ある会社は30年以上、同じ価格で仕事を受け続けていました。発注側からは「助かっている」「信頼している」と言われ、関係も良好でした。
しかしある日、その会社は突然廃業しました。理由は明確で、利益が出ず、体力が尽きたからです。長年の我慢が限界に達したのです。
発注側は慌てて代替先を探しましたが、提示された価格は従来の約3倍でした。それが本来あるべき価格だったのです。結果として、発注側も困り、受注側も消えるという、誰も得をしない結末になりました。
もし途中で価格を見直していたらどうでしょうか。少しずつでも調整していれば、双方にとってより良い関係を維持できた可能性は十分にあります。
■捨てるべきは「下請け根性」
この事例が示しているのは、「下請けは我慢するもの」という思い込みの危うさです。
企業同士は本来、対等な関係です。規模の差はあっても、「いくらで売るか」を決める権利は売り手にあります。それにも関わらず、「価格は相手が決めるもの」と考えてしまう。
ここに問題の本質があります。
捨てるべきは、この“下請け根性”です。
必要以上に遠慮し、関係維持を優先する姿勢は、一見すると誠実に見えます。しかしその裏で利益が削られているのであれば、健全とは言えません。
■持つべきは「下請けプライド」
一方で、持つべきものもあります。それが「下請けプライド」です。
今も取引が続いている理由を考えてみてください。もし価格だけで選ばれているなら、多くの場合もっと安い会社に置き換わっているはずです。それでも取引が続いているのは、品質や納期、対応力、信頼関係といった価値があるからです。
その価値に対して適正な対価を求めることは、決してわがままではありません。むしろ、事業を継続するために必要な行為です。
■安さで守った関係は長続きしない
利益が出なければ、設備投資も人材育成もできません。無理を続ければ品質は落ち、納期にも影響が出ます。結果的に取引先にも迷惑をかけることになります。
安さで守った関係は長期的に見ると不安定です。短期的には喜ばれても、長くは続かない。これが現実です。
■最初に整理すべき2つの視点
では、何から始めるべきか。
まず「関係維持」と「事業維持」を切り分けて考えることです。関係は大事ですが、会社が存続できなければ意味がありません。
次に、「値上げ=迷惑」という前提を見直します。値上げはお願いではなく、提案です。そのうえで、自社の価値を言語化し、価格の話につなげていきます。順序を間違えると、単なるお願いで終わってしまいます。
■一人で悩まないという選択
遠慮して守った関係は、会社を守ってくれません。
言うべきことを言いながら続けられる関係こそが、健全なパートナー関係です。
とはいえ、実際に一歩踏み出すのは簡単ではありません。「どこまで言ってよいのか」「どう切り出せばよいのか」と迷うのは当然です。
そうしたときは、一人で抱え込まず外部の視点を入れてください。
■次の一歩:よろず支援拠点の活用
東京都よろず支援拠点では、価格交渉や収益構造の見直しについて無料で相談ができます。現状の価格が適正なのか、どのように交渉を進めるべきか、具体的に整理することが可能です。
この価格で良いのかを考えてみて、少しでも不安があるなら、それは見直しのサインです。
一人では見えない答えも、誰かと整理すれば必ず見えてきます。その一歩が、会社の未来を変えていきます。
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