東京都よろず支援拠点コーディネーターの関です。
今回のテーマは、事業承継に関するご相談です。
事業承継のご相談と一口にいっても、実に様々な切り口があります。例えば、
1.子どもが継ぐ意思があるかわからないが、どうしたらよいか
2.父親が亡くなり長男である私が代表を継いだが、株式は別の者が保有している、そのままでよいか
3.M&Aはどう進めたら良いか、M&A業者との契約書を見てもらえないか
4.事業承継に利用できる補助金、助成金はないか
5.コロナ禍で業績が悪化しているが、後継者に代表をすぐに継がせるべきか
6.コロナ禍で廃業も考えているが、借入金や経営者保証はどうすればよいか
などなど、企業によって取り組むべき課題は異なります。
そんな中、私が弁護士のコーディネーターだからかもしれませんが、最近、相談が増えてきて、しかも解決が実に難しいと感じる課題は、経営者に認知症の症状がでているケースです。
認知症でも相談者によって進行状況は異なっていて、少し物忘れが増えてきたかもという程度の診断名もつかないような初期段階のものから、既に自ら判断することが困難なほど症状が進行しているケースまであります。
事業承継においては、経営者が代表取締役の代表権を返上し、後継者を代表取締役に就任させることが必要になります。後継者が取締役に既に就任しているか、取締役会が設置されているか、定款にどのような定めがあるか等によって、その手続は企業ごとに異なりますが、経営者の認知症が進んでいると、手続上、代表権を移行させることが困難なケースがあります。
また、事業承継においては、経営者が保有する株式を後継者に承継させることが必要となります。その方法として、贈与、売買、遺言書の作成などを行うことが多いのですが、このような生前の対策は、認知症によって判断能力がなくなった後には実行することができません。
このように認知症の症状がかなり進行している段階ではとりうる対策も限られてきますので、最近のご相談を受ける中で、やはり、事業承継は、後回しにせず、早めに取りかかることが重要なんだということを再認識しています。
中小企業庁が策定した事業承継ガイドラインでは、経営者が60歳になったときに、事業承継計画を作り始め、5年から10年かけてじっくり事業承継を実現して行くことを推奨しています。
もっとも、経営者が70代、80代と高齢となり既に認知症の症状が出始めているときには、じっくりではなく、直ちに、事業承継の実現に取り組んでください。
このメルマガを読んで少しでも気になることがあれば、早めに、東京都よろず支援拠点にご相談ください。よろず支援拠点では、丁寧にお話をお伺いしますので、課題の整理にお役立ていただけます。
なお、これから事業承継を始めるにあたって全般的な取り組み方法を知りたいという方は、私が監修を務めた「事業承継のすゝめ」(発行:東京都中小企業振興公社)が参考になります。ウエブサイトをご覧ください。https://shoukei.tokyo/