こんにちは、東京都よろず支援拠点のコーディネーター金子敦彦です。
今回は、東京都よろず支援拠点で私にご相談される内容では最も多い売上の拡大について のお話です。様々な業種の事業者様に当てはまるお話だと思いますので、最後までご覧いた だければ幸いです。
売上拡大のご相談では、〇〇をやってみたのだけれどもっと成果を出すためにはどうした らよいかという具体的な手法のお話と、売上を上げていきたいがどのようなことをやって いけばよいかという方向性を考えるお話があります。今回は後者についてです。
売上拡大の取り組みを行うにあたり、使える予算もエネルギーも限られているので、まずは、 自社が利用してもらいたいお客様に向けてどんな取り組みを行っていくことが有効である かを考える必要があります。その際にお客様側が商品やサービスを選ぶ時の思考を考えて 何を行っていくべきかを考えましょうというのが今回の主題です。
お客様が商品やサービスの選定を行う際の思考の流れをブレイクダウンした枠組みとして、 「ブランドカテゴライゼーション」という考え方があります。この枠組みでは、最終的に商 品が選定されるためには、お客様の想起集合の中に入り、第一想起に入ることが望ましいと されます。では、この第一想起や想起集合とはなにか、そこにたどり着くまでにどのような 思考が行われていると考えられるかなどを説明します。以下の図をご覧ください。
お客様が商品やサービスを選定して購入に至るまでの流れには、知名段階、処理段階、考慮 段階、選考段階の4つの段階があるとされています。その前段階でまずは、入手可能である
かどうかが選考するための前提となりますので、入手可能段階というものがあります。これ は、購入できるかどうかということです。例えば新橋で 1 時間後の経営相談の前にランチ を食べたいとしたら、北海道や九州など物理的距離が離れた店舗は選択肢に入りませんよ ね。入手可能な範囲内で選考が始まります。
まず、知名段階は、知っているか知らないかということで、知っているもしくは調べて知っ たという知名集合の中の商品やサービスが選考に残ります。
続いて、処理段階です。処理段階ではよく知っている処理集合とよく知らない非処理集合が あり、非処理集合は考慮段階には進まずに落選するとされています。
考慮段階では、想起集合、保留集合、拒否集合の 3 つがあります。拒否集合はよく知ってい るけど購入したくない、あそこのお店は行きたくないと考えられるものです。保留集合は、 拒否はしないけれど想起集合には入らない惜しい集団です。そして、想起集合は先ほどの例 では、新橋でランチに行くならどこがあるかなと考えて候補に挙がってくる店舗の集合に なります。
その中で第一候補に挙がってくるのが第一想起、その他の想起集合は、第一想起ではない第 二想起、第三想起等の集合体になります。商品やサービスカテゴリーによって違いはありま すが、多くのカテゴリーでは選ばれる割合は第一想起が圧倒的に高くなっています。 さて、これらを踏まえて売上拡大の取組ですが、お客様の立場にたって考えたときに、自社 の商品やサービスは 4 つの段階のどこで脱落していることが多いと考えられるのか、脱落 の高い段階があればその対策はどのように行っていくのかなどを考えていきます。各段階 での脱落の可能性が下がれば、選定される可能性が高まり、売上が拡大する可能性が高まっ てくるということになります。
お気づきかもしれませんが、各段階での脱落の可能性を下げることは売上拡大を行うため に即効性があるものではない場合が多いです。しかし、お客様目線から現状を把握して、脱 落の可能性を下げていくことで継続的に売上の拡大を行っていく仕組みづくりにつながっ ていくと考えられます。東京都よろず支援拠点での売上拡大のご相談も、多くの場合一度で 急激に売上が拡大するものではありません。売上拡大のためには効果測定を行いながら、月 に 1 回程度ご相談を継続的に行っていただくと良いと思います。
※参考文献:「売上の地図」池田 紀行(日経 BP)