東京都よろず支援拠点コーディネーターの松本典子です。
現代の1日分の情報量は江戸時代の1年分、平安時代の一生分だと言われるようになりました。「スマホ依存」というような言葉も出てきたように私たちは日々多くの情報に触れて、情報過多で脳が疲れています。お客様に買ってもらう、選んでもらうことはますます難しくなってきています。
そのような中、2024年1月に公益社団法人日本マーケティング協会が34年ぶりにマーケティングの定義を刷新して話題になりました。デジタル技術が社会を変える影響力のみならず、シェアリングやクラウドファンディングを始め、社会における個人の影響力の大きさが定義変更の背景にあります。今までは企業から消費者への一方通行だったのが、消費者から消費者という構造も出てきて、より市場は複雑になってきたことがわかります。
【マーケティングの定義(2024年制定)】
(マーケティングとは)顧客や社会と共に価値を創造し、その価値を広く浸透させることによって、ステークホルダーとの関係性を醸成し、より豊かで持続可能な社会を実現するための構想でありプロセスである。
1)主体は企業のみならず、個人や非営利組織等がなり得る。
2)関係性の醸成には、新たな価値創造のプロセスも含まれている。
3) 構想にはイニシアティブがイメージされており、戦略・仕組み・活動を含んでいる。
【1990年に制定されたマーケティングの定義】
マーケティングとは、企業および他の組織1)がグローバルな視野2)に立ち、顧客3)との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動4)である。
1)教育・医療・行政などの機関、団体などを含む。
2)国内外の社会、文化、自然環境の重視。
3)一般消費者、取引先、関係する機関・個人、および地域住民を含む。
4)組織の内外に向けて統合・調整されたリサーチ・製品・価格・プロモーション・流通、および顧客・環境関係などに係わる諸活動をいう。
出典:日本マーケティング協会(https://www.jma2-jp.org/home/news/916-marketing)
2024年のマーケティングの定義をあらためて振り返ると「(マーケティングとは)顧客や社会と共に価値を創造し、その価値を広く浸透させる(中略)プロセスである。」とあります。マーケティングと思い浮かべる場合、情報発信のみに力を入れがちなのですが「その価値を広く浸透させる=情報発信をしてお客様に届ける」と記載されていることがわかります。キャッチコピーとは「その価値を広く浸透させる」役割を担っています。まずは大前提として商品やサービスが持つ「その価値」を整理していくことが重要です。
例えば、丸亀製麺のこだわりである手作りを強調した「ここのうどんは、生きている。」というコピーが代表的な例です。こだわりである手作りが十分にお客様に伝わっていなかったことを踏まえて、このコピーを通してこだわりがお客様に浸透していき、業績が回復しました。
売上はビジネス環境が絶えず移り変わる中で、何もしなければ自然と落ちていきます。そのため、お客様に飽きられないようにお客様の変化に合わせて、私たちは新しい商品やキャンペーンを考えていきます。ただ、その中で自社のこだわり、強みを自分たちが見失ってしまうこともあります。ビジネス環境の変化に合わせつつも自社の核となる強みを大切にしていくことが重要です。
キャッチコピー、と考えた時に職人技術のようなものが求められると考えがちですが、本質的な考え方は非常にシンプルです。
※SWOT分析でいうところのS(強み)とO(機会)を徹底的に見直して、お客様に何をどのように伝えると良いのかを考えていきます。
東京都よろず支援拠点でのご相談の中でもO(機会)、つまりビジネスチャンスを提供してくれるお客様が何を必要としていて、自社のS(強み)でどのように応えられるのかを一緒に考えていきます。少し言葉を変えただけで強みが一層引き立ちます。
モノや情報が溢れる時代だからこそ、自社のキャッチコピーを見直しが必要です。
東京都よろず支援拠点では商品やサービスの価値を広く浸透させるマーケティングのご相談も承っておりますので、ぜひご活用ください。
※SWOT分析
現状分析のために使われるフレームワーク。自社の外部環境と内部環境をStrength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の4つの要素で要因分析することで、既存事業の改善点や伸ばすべきポイント、新規事業の将来的なリスクなどを見つけることができる。