経営者応援ブログ

中小企業の未来を左右する、労働生産性改善のために知っておくべき方法とは?

こんにちは。東京都よろず支援拠点コーディネーターの戸田雅裕です。

日々の業務の中で「もっと効率よく働けたら…」と考えることはありませんか?限られた時間の中で成果を上げ、同時に業務に付加価値をプラスすることが、これからの企業成長の重要なカギとなります。作業効率を上げつつ、いかにして高い価値を生み出すか。これこそが、今後の企業の成功を左右するポイントではないでしょうか?

1.日本の労働市場が抱える危機と中小企業の挑戦

日本の労働市場は今、深刻な危機に直面しています。内閣府のデータ(令和4年度高齢社会白書)によると、2021年時点で約7,450万人いた生産年齢人口(15歳から64歳)は、2065年には約4,529万人にまで減少すると予測されています。この減少幅は年間で約66.4万人に上り、労働力の不足が企業の生産能力を大きく制限する恐れがあります。

少子高齢化が進む中で、企業が提供できる商品やサービスの総量が減少し、日本全体の経済力にも大きな影響を与えることが懸念されます。こうした厳しい状況の中で、中小企業が生き残り、成長を続けるためには、限られた労働力を最大限に活用する「労働生産性の向上」が避けて通れない課題となっています。

2.日本の労働生産性の現状 かつての輝きはどこへ?

1990年代、日本の労働生産性は主要先進国の中で米国に次ぐ高水準を誇っていました。しかし、時代は変わり、(公社)日本生産性本部が公表した「労働生産性の国際比較2022」によると、2021年の日本の一人当たりの労働生産性は主要先進7カ国(G7)の中で最下位、OECD加盟国38カ国中で29位という厳しい状況にあります。かつての栄光から一転、日本は他国に比べ、労働力を効率的に活用できていない現実に直面しています。

3.中小企業でも可能な生産性向上の余地

中小企業における労働生産性が、大企業に比べて著しく低いことは明らかです。2024年版の中小企業白書によると、大企業の労働生産性の中央値が605万円に対し、中規模企業は315万円、小規模事業者に至っては168万円と、依然として低い水準にとどまっています(図表1)。この大きな差を埋めることが、日本全体の経済成長にとって重要な課題となっています。

しかし、中小企業でも労働生産性を高める余地は十分にあります。実際、労働生産性の上位10%の中小企業は、小規模事業者で677万円、中規模企業で841万円と大企業の中央値605万円を超える成果を上げています。つまり、工夫次第で中小企業でも労働生産性を大幅に向上させることができます。

【労働生産性(企業規模別・%タイル)】図1 

(出典:中小企業白書2024 中小企業庁)

(注釈)90%タイルは、中小企業の上位10%の水準。

4.労働生産性の定義とその重要性

では、具体的に「労働生産性」とは何か、そしてどうすればそれを向上させることができるのでしょうか?

労働生産性とは、付加価値額を労働者数や労働時間で割った値を指します。付加価値とは、企業が生産やサービス提供を通じて新たに生み出した価値のことであり、営業利益に人件費や減価償却費などを加えたものです。この式は、企業がどれだけ効果的に労働力を活用し、付加価値を生み出しているかを示す重要な指標となります(図表2)。

労働生産性の向上は、企業の成長だけでなく、競争力強化や持続的な利益の確保にも直結します。労働生産性が向上すれば、同じリソースでより多くの価値を生み出すことが可能となり、コスト削減や顧客満足度の向上、さらには社員の働きがいの向上にもつながります。特に中小企業にとっては、限られたリソースを最大限に活用し、市場での競争力を確保するために労働生産性の向上が不可欠です。労働生産性の改善が、企業の持続的な成長と成功の鍵を握っているのです。

【労働生産性の定義】図2

 「平成29年4月改訂 中小企業等経営強化法 今すぐやる経営革新」を参考に筆者修正

5.労働生産性を高めるための効果的分析手法

労働生産性を向上させるためには、まず自社の現状を正確に把握し、どこに改善の余地があるのかを見極めることが重要です。生産性向上の第一歩は、現状を正しく分析することから始まります。ここで活用できる効果的な分析手法として2つを紹介します。

1)同業他社との比較

自社の労働生産性を同じ業界内の他企業と比較することで、自社が業界全体の中でどの位置にあるのかを把握できます。この比較により、競争力を強化すべき点や改善の余地が明確になります。例えば、経済産業省の「平成30年企業活動基本調査速報」では、業種ごとの労働生産性を確認でき、業界全体の中での自社の立ち位置を知ることができ、業界内での競争優位を築くためのヒントを得ることができます。

2)自社の期間内比較

自社の労働生産性を特定の期間内で比較することで、時間の経過に伴うパフォーマンスの変化を把握し、どの施策が効果的だったのか、またはどこに改善が必要かを見つけることができます。過去の実績と現在の状況を比較することで、成功した施策を継続し、失敗した施策を改善するための戦略を立てることができます。この継続的な見直しが、安定した成長と労働生産性向上へのカギとなるのです。

6.労働生産性向上のための具体的な取り組み

最後に労働生産性を向上させるための具体的な取組を考えてみましょう。まずは自社の強みや弱みを正確に把握し、どの分野で改善の余地があるのかを分析することが重要です。その上で、以下のようなアプローチを取ることで、効率化と付加価値の向上の両面から労働生産性を引き上げることが可能です。

1) 業務プロセスの改善

業務フローの見直しや自動化ツールの導入を通じて、無駄な作業を削減し効率化を図ることにより、従業員がより付加価値の高い業務に集中できる環境を整えることができます。

2) 従業員のスキルアップ

定期的な研修やスキルアップの機会を提供し、従業員の効率的かつ質の高い業務遂行により、付加価値の高いサービスや製品を生み出すことが期待できます。

3) 新たな付加価値の創出

市場のニーズに応じた新製品開発や、既存サービスの質の向上に力を注ぐことで、他社との差別化を図り、顧客満足度を高め企業業全体の競争力を引き上げることが可能です。

4) 設備投資の最適化

最新の技術や設備を導入することで、作業効率を向上させると同時に、付加価値の高い製品やサービスを提供する基盤を築き、長期的な労働生産性の向上と競争力強化が期待できます。

7.まとめ

労働生産性の向上は、人口減少と少子高齢化が進む日本において、企業が持続可能な成長を実現するために避けて通れない課題です。中小企業でも労働生産性を向上させる余地は大きく、自社の状況を正確に把握し、適切な戦略を講じることで、競争力を高めることが可能です。

労働生産性向上に関する企業経営への活用の仕方、具体的な取り組み方法、労働生産性向上に関連する公的支援施策の活用等についてご興味があれば、東京都よろず支援拠点にご相談下さい。

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