経営者応援ブログ

株価を把握して事業承継に備える~事業承継に必要な自社株評価の仕組み

こんにちは。東京都よろず支援拠点コーディネーターの星田直太です。

経営者の皆様は、自社株式の株価を把握していますか?

会社にとって事業承継は重要かつ大きな転換期となりますが、一朝一夕に行うことができるものではなく、一定の準備期間のなかで計画的に取り組むべき課題といえます。事業承継では、経営者は後継者に対して有形・無形の様々な資産を承継しますが、なかでも自社株式をどのように承継させるかについて強い関心を持たれている経営者の方が多いのではないでしょうか。そして、自社株式の承継方法を考えるには自社株式の評価額(株価)を把握しておくことが必要です。このブログでは、そのような中小企業の自社株式評価額計算の仕組みについて、概要を簡単にご紹介します。

中小企業の株式評価とは

相続税法では、相続や贈与により取得した財産の価額はその取得の時の時価によると定められています(相続税法第22条)。「株価」とは株式の時価のことで、株式の「評価額」ともいいます。この「時価」は一般的に客観的交換価値を意味するとされていますが、中小企業の株式は株式市場に上場されていないため、その評価額を算出するためには、税法に定められた一定のルールに基づいた計算を行うことが必要です。なお、このような中小企業の株式は、税法では「取引相場のない株式」と呼ばれています。

この「取引相場のない株式」の評価は、公平性や評価の安全性を確保するために、原則として「財産評価基本通達」というルールに従って行われます。この計算ルールはとても細かく、相続・贈与と譲渡・自己株式取得等では採用される評価方法が異なるなど複雑ですので、個々の会社の状況や取引内容に応じた慎重な判断が必要です。

原則的評価方式と特例的評価方式

以下、相続・贈与の場面における「取引相場のない株式」の評価を行うことを前提とします。まず、評価方式には原則的評価方式と特例的評価方式という2つの方式があります。この方式は任意に選ぶことができるものではなく、相続や贈与などで株式を取得した株主が、その会社の経営に対する支配力を有している同族株主等に該当するか、あるいはそれ以外の株主なのかによって区分されます。前者の場合は原則的評価方式により、事業承継の際に経営者から後継者へ株式が渡る場面はこれに該当するでしょう。

純資産価額方式と類似業種比準価額方式

原則的評価方式では、純資産価額方式と類似業種比準価額方式を用いて株式の評価額を求めます。まず、純資産価額方式は、会社の資産や負債を相続税法上の評価に洗い替えて、その純資産(資産と負債の差額)から一定額を控除して評価する方法で、評価時点の清算価値に近いものといえます。一方で類似業種比準価額方式は、会社と類似の業種を営む標本会社(上場会社)の株価を基礎にして、配当金額・利益金額・純資産価額の3つの要素を比準して評価する方法です。
 この純資産価額方式と類似業種比準価額方式のいずれを採用するか、または2つの評価方式を併用するかは、会社の総資産価額や従業員数、取引金額によって会社の規模を大会社・中会社・小会社のいずれかに区分することによって決定します。大会社に分類された場合は原則として類似業種比準価額方式によって評価し、小会社に分類された場合は原則として純資産価額方式によって評価します。中会社の場合は、純資産価額方式と類似業種比準価額方式の併用方式となります。
 ただし、すべての会社がこの区分に従った評価をするわけではなく、土地等の保有割合が高い会社(土地保有特定会社)や株式等の保有割合が高い会社(株式等保有特定会社)、休業中や清算中の会社等については、異なった評価方式が採用されますので注意が必要です。

評価額を簡易的に確認できるツール

東京商工会議所から簡易的に評価額(相続や贈与における評価額)を確認できるツールが提供されているので、参考にするとよいでしょう。

東京商工会議所 株価試算から始める事業承継対策
https://www.tokyo-cci.or.jp/jigyoshoukeiportal/kabuka/

なお、このツールの試算結果はあくまでも評価額の目安であり、利用する際にはサイトに掲載されている注意事項をよく確認する必要がある点にご留意ください。

株式評価は事業承継対策の第一歩

株式評価額を知ることは事業承継対策の第一歩といえますが、経営者の方や経理担当者の方が株式評価額を自ら計算することは負担が重いかもしれません。評価額計算においては税法の知識が不可欠ですので、まずは顧問税理士の方へ評価額の算定を依頼してみることをお勧めします。

取引相場のない株式評価方式の動向

なお、現在の評価方式がこの先も続くとは限りません。令和6年11月に会計検査院が公表した令和5年度決算検査報告によれば、取引相場のない株式の評価について、類似業種比準価額方式が純資産価額方式よりも相当程度低く算定されており、評価間で評価額に相当のかい離があった等の指摘がされています。さらに会計検査院は「評価制度の在り方について様々な視点からより適切なものとなるよう検討を行っていくことが肝要」とも述べていることから、今後の通達改正に向けた動きに発展する可能性がありますので、注視が必要でしょう。

事業承継に関する相談は東京都よろず支援拠点へ

事業承継は、早めに計画を立てて準備を始めることが成功の鍵です。東京都よろず支援拠点では、事業承継に詳しい中小企業診断士、弁護士、税理士が在籍し、経営者の方々のご相談に対応しています。もし事業承継についてお悩みがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

事業の未来を見据えて、早めに準備を進めていきましょう。

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