経営者応援ブログ

事業承継のはじめの一歩 ~事業承継を検討するとは「いつまでに」を決めること~

こんにちは。東京都よろず支援拠点 立川事務所サブチーフコーディネーターの浅沼です。

事業者とお話ししていますと、いろいろな経営上の課題があります。人手不足や人材不足、売上確保、販路開拓、資金繰り(現金不足)、新規事業への展開、そして将来への「事業の承継」など。
今回は、事業の承継についてです。

事業の承継は、個人事業主であれ法人であれ、いつかは必ず訪れる経営上の課題(≒対応が必要な事項)です。

~個人事業は「事業が個人本人のもの」法人は「事業が会社のもの」~

【個人事業主の事業承継】

個人事業主の場合、事業と本人が一体であるため、法人のように「会社の株を譲渡する」という形がとれません。そのため、承継にあたっては事業資産の引き継ぎや許認可の再取得、名義変更などをひとつずつ対応する必要があります。許認可や税務の手続きにおいても、例えば保健所の営業許可(飲食・理美容など)、資格者変更、税務署への「廃業届」「開業届」提出が必要(譲渡者は廃業届、譲受者は開業届)などの対応も必要です。
場合によっては、法人化(会社設立)してから事業を承継する方がスムーズなケースもあります。
法人化すれば、「株式譲渡」や「代表交代」など、形式的に手続きを踏めるようになります。税務上のメリット・デメリットも考えられるため、専門家(税理士・中小企業診断士など)への相談が有効です。
手続き面のみならず、個人事業主ならではの課題として、「承継をきっかけに、顧客や従業員が離れてしまう」ことも生じます。信用は「経営者本人」にあることが多く、譲受者である後継者が一から信頼を築く必要もあります。
時間をかけて、検討したい課題です。

【法人の事業承継】

法人の場合、事業の主体は「会社」という“人格”であり、個人事業主の経営者個人とは法律的に別物です。
そのため、法人の事業承継では、「経営権の譲渡≒株式の移転」と「役職の交代≒代表取締役の変更」によって、会社そのものは継続したまま経営者が代わる、という仕組みになっており、個人事業の承継とは異なる部分です。

さて、法人の事業承継のご支援をさせていただく際に、事業者様にお伝えしていることがあります。
それは「4W1H」を意識しながら、事業承継を進めていくことです。4W1Hとは、

  • Why: 何のために
  • What :何を
  • Who: 誰に
  • When: いつ
  • How :どのように

です。

Why につき、「事業継続を期待してくれている家族や従業員、取引先などの関係者の期待に応え、あるいは外部環境である市場や顧客のニーズに継続して応えていくため」と共有を図っております。

Whatについては、「ヒト=代表取締役という地位」「モノ=現経営者が保有する個人資産である当社株式」「カネ=財務の状態」「知的資産=売上を上げる源泉」が承継すべき対象「物」として端的に把握してもらいます。

Who は 「誰に任せるか」です。経営は代表取締役が担うことになります。代表取締役は株式の過半数を持つ株主の意向にて通常決まりますので、経営者の変更と株式の移転は一緒に検討すべきことです。

When は非常に大事です。
「いつ」「いつまでに」という、時間的区切りを設けないと物事は進まないということを、経営者にお伝えしています。「まだまだ現役で働きたい」という経営者に引退を勧めるわけでは決してありません。承継後であっても、後継者に経営を任せながら気力・体力が続く限り現場で続けていただきます。但し、時間軸を設け計画的に進めていかないと、「機を逸する」いわゆる「遅い」ということになりかねません。

最後にHowです。 「どのように」ですが、これは端的に、事業承継支援を行っている専門家と一緒に進めていくこととお伝えしています。顧問税理士が事業承継に通じているならその先生、国の支援機関である「東京都よろず支援拠点」や「事業承継・引継ぎ支援センター」、東京都の施策である「事業承継促進事業」など、活用できる支援機関や施策はいろいろあります。加えて地域の金融機関も相談できる身近な存在です。事業者の歴史や経営者の人柄も分かってくれていますし、上記のような支援機関や施策を案内してくれるかと思います。

「うちはまだ早いよ」「息子も娘も継がないし、考えても仕方ない」
このような言葉を、支援現場で何度もお聞きしました。
事業承継は、すぐに答えが出る話ではありません。けれど、「そのうち考えよう」と思っているうちに、時間だけが過ぎていく。そして、気づいたときには体力的にも経営的にも引き際を選べない状況に。そんな後悔をされる経営者の方も少なくありません。

【最後に】

最初の一歩は「話してみること」。
事業承継は「終わり」ではなく、「想いをつなぐ」始まりです。親族が継ぐ場合も、従業員が継ぐ場合も、あるいは外部の第三者に託す場合でも、事前の準備こそが会社を守ることにつながります。
「今さら聞けない…」
「誰にも相談してこなかった…」
そんな方こそ、ぜひ一度、身近な地域の金融機関、支援機関に問い合わせをしてみてください。もちろん、私たち、東京都よろず支援拠点でも全力でご支援いたします。

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