こんにちは。東京都よろず支援拠点 コーディネーター・中小企業診断士の松本典子です。
創業に関するご相談を10年近く受けていると、「本当に売れるかどうかが一番不安です」「そもそも、どう売っていけばいいのか分からない」といった声をよく耳にします。
この不安の正体の多くは、「誰に・何を・どのように売るのか」というマーケティング設計が曖昧なことにあります。
この記事では、そんなモヤモヤを一緒に整理し、「売れる設計図」に近づくためのマーケティングのポイントを、創業期の方向けにやさしくお伝えします。
1.マーケティングは情報発信だけではない
マーケティングは「誰に・何を・どのように売るのか」を設計するプロセスであり、情報発信はその一部にすぎません。
「マーケティング=SNSなどの情報発信」と思われがちですが、これはよくある誤解です。
マーケティングの大家・フィリップ・コトラーは、マーケティングを「顧客にとっての価値を創造し、関係を築くプロセス」と定義しています。
つまり、商品やサービスの企画から、価格設定、販売場所、伝え方まで、一連の流れを設計することがマーケティングなのです。
その基本となる考え方が「4P」です。(マーケティングを整理するための基本フレームです)
- 商品そのもの(Product)
- 価格(Price)
- 提供する場所・ルート(Place)
- 広告やSNSなどの伝え方(Promotion)
情報発信だけを切り離して考えてしまうと、「そもそも何を・誰に伝えるのか」が定まらず、発信すること自体が怖くなってしまいます。
まずは「4P」の全体像を押さえたうえで、自分の事業はどこから整えるべきかを考えてみましょう。
2.「売れるか不安」は強みが言語化できていないサイン
この不安の正体の多くは、「誰にとって、どんな価値があるのか」がまだ言葉になっていないことにあります。
「この商品は売れるでしょうか?」というご相談の多くは、商品やサービスの“強み”が、まだご自身の中で整理しきれていないことが原因です。
「誰にとって、どんな価値があるのか」が曖昧なままだと、価格やメッセージも決めきれず、不安ばかりが大きくなってしまいます。
ここで大切なのは、「良いものだから」ではなく、「どんな人が、どんな場面で、どう嬉しいのか」を具体的に表現することです。
たとえば、ただの「時短家電」ではなく、保育園から19時に帰宅して、21時頃には子どもを寝かせたい。
そのために夕方の家事時間を30分でも短くしたい共働きの子育て世帯向けの時短家電と表現できれば、伝わり方は大きく変わります。
まずは、以下の3つを紙に書き出してみましょう。
- 「なぜ他の選択肢ではなく、それを選んでもらえるのか」を一文で説明する
- その一文を、チラシやホームページ、SNSプロフィール文の土台にする
- 家族や友人に読んでもらい、「どこがピンときたか」「分かりにくいところ」を聞いてみる
この一文が、今後の発信の軸になります。
3.カーネマンの理論とターゲット・インサイト
人は、難しい話にはあまり付き合ってくれません。
パッと「自分のことだ」と思えた情報だけを拾います。
ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンは、人間の思考を「自動的で素早いシステム1」と「ゆっくり考えるシステム2」に分けて説明しました。
脳はなるべく楽をしたいので、「自分には関係なさそう」と感じた情報は、無意識のうちに見過ごしてしまいます。
つまり、お客さまに「自分とは関係ない」と思われた瞬間、どんなに魅力的な投稿も、そもそも見てもらえないのです。
だからこそ、「誰の、どんな本音の悩みや願望(インサイト)に応えるのか」を具体的にしておくことが重要です。
ペルソナは「どんな人か」という外側のプロフィール。
インサイトは「その人が心の中で本当に望んでいること」です。
ここまで明確になると、「便利なサービスです」ではなく、「夕方30分を取り戻したいママのためのサービスです」と伝えられるようになります。
4.創業初期の情報発信は「量」と「続けられるペース」
大事なのは「続けられる仕組み」です。
完璧さよりも、一定のペースを大切にしましょう。
創業したばかりの頃は、まだ多くの人があなたや商品・サービスの存在を知りません。
この段階では、情報発信は「質」だけでなく、一定の「量」も意識することが大切です。
とはいえ、毎日投稿する必要はありません。たとえば「週2回」など、無理なく続けられるペースを決めてみましょう。
同じ内容を、切り口を変えて何度か伝えるだけでも十分です。
5.オンラインだけでなく「身近な人」から始める
創業初期は、オンライン発信だけに頼らないことも大切です。
家族、友人、前職の同僚、地域の知り合いなど、身近な人に事業内容を説明してみましょう。
リアルな会話は、自分の言葉で強みやターゲットを整理する良い練習になります。
まずは身近な10人に話してみて、その反応や質問をメモしておくと、発信のヒントがたくさん見えてきます。
6.発信は「仮説検証」のためのツール
マーケティングは、仮説を立てて、検証し、修正していくプロセスです。
「この悩みには、この表現が響くはず」そう考えたら、まずは小さく発信してみましょう。
反応は、次の改善のヒントになります。価値は、一度で完成させるものではありません。
7.「変な発信をしてイメージが悪くなるのが怖い」をどう乗り越えるか
「ちゃんとしていないと思われたらどうしよう」そんな不安を感じる方は、とても多いです。
でも、創業初期は、実は一番試行錯誤しやすい時期でもあります。
最初は、ほとんど誰も見ていません。
だからこそ、小さく試して、少しずつ改善していけます。
うまくいかなかった発信も、次の一手を考えるための大切なヒントです。
8.不安を感じたときは一人で抱えない
「まだアイデア段階だけど大丈夫かな」「うまく言葉にできないけど相談していいのかな」そんな状態でも問題ありません。
「売り方が不安」「自分の商品に自信が持てない」と感じたときは、マーケティングの全体像と強みを整理するチャンスです。
東京都よろず支援拠点では、創業前後のマーケティングや情報発信について、専門家が無料でご相談をお受けしています。
一人で抱え込まず、ぜひお気軽にご相談ください。