現状の数字から「未来の数字」へ
こんにちは。東京都よろず支援拠点コーディネーターの中村友樹です。
以前、この経営者応援ブログで、お金の流れを直感的に理解するツールとして「お金のブロックパズル」をご紹介しました。
〜簡単にお金の流れを見える化!〜お金のブロックパズルを作って経営判断に活用しよう!
https://tokyoyorozu.go.jp/2025-04-10/
おかげさまで、よろず支援拠点にお越しになる多くの経営者と一緒に「お金のブロックパズル」を作成させていただき、「自社の現状が掴めた!」という嬉しいお声をいただいています。
現状の数字が整理できると、頭を悩ませていた漠然としたお金の不安が少し和らぎます。しかし、現状を把握することはあくまでスタートラインに過ぎません。
日々の業務に追われていると、どうしても今月・来月の売上をどう作るかに意識が集中してしまいます。ですが、会社を少しでも良くしていきたいと考えたとき、必要になるのは「未来の数字」を描くことです。
今回は、お金のブロックパズルを使った「未来の描き方」と、それを実現するための具体的な打ち手について、身近な事例を交えながら一緒に考えていきましょう。
カフェの事例で考える、利益から逆算するブロックパズルの作り方
未来のブロックパズルを描くとき、最も重要なルールがあります。それは「売上から考えない」ということです。一番下にある「残したい利益」から逆算して組み立てていきます。
わかりやすく、ある身近なカフェの事例で考えてみましょう。
このカフェの年間売上は1,200万円、粗利率は70%で粗利は840万円です。
固定費は、社長とアルバイトの報酬500万円と家賃などのその他固定費300万円を引くと利益は40万円。納税と借入金の返済70万円を行うと繰越金はマイナス42万円となっています。【図1】

社長は、「利益は出ているものの借入金を返済するとキャッシュが減る。少なくとも、キャッシュが減らない利益を生み出したい」と考えました。これが未来のパズルのスタート地点です。現在のブロックパズルを未来のブロックパズルに書き換えていきましょう。
まずは、繰越金をマイナスからゼロにするためには、税引後利益を70万円にする必要があります。税率を30%と仮定すると、必要な利益は100万円。
次に、「固定費」は変わらず800万円とすると、必要な粗利額は900万円。粗利率が70%で変わらないとすると、必要な売上高は1,286万円となります。つまり、繰越金(キャッシュアウト)をゼロにするには、あと売上高を86万円増やせればよいということが明確になりました。【図2】

ギャップを埋めるための「6つの打ち手」
では、「86万円の売上ギャップ」をどうするか。次は、このギャップを埋めるためのアクションを明確にしていきます。
この差を埋めるための具体的な打ち手は、構造上、以下の「6つの視点」で整理できます。一つずつカフェの事例に当てはめてアイデアの例を考えてみましょう。
(1)客単価を上げる
少し価格設定の高いこだわりのスペシャルティコーヒーを導入し、一人当たりの金額を増やす。レジ横にプチ菓子を置いて、会計時のついで買いを促す。
(2)客数を増やす
店舗前の看板を分かりやすく書き換えて新規の入店を促す。Instagramで美味しそうなメニューの写真を定期的に発信し、近隣の認知度を上げる。
(3)リピート率を上げる
スタンプカードを導入して再来店を促す。常連のお客さまの顔と好みを覚え、居心地の良い接客を徹底することで、月に1回だった来店を月に2回に引き上げる。
(4)変動費ダウン(材料費の削減)
品質を落とさないように、食材の仕入先の見直しや使用する原材料を見直す。また、メニューを絞り込むことで食材の廃棄ロス(フードロス)を減らす。
(5)生産性向上
モバイルオーダーシステムやキャッシュレス決済を導入し、注文と会計の時間を短縮する。時間帯別の来店数予測の制度を上げて、アルバイトの労働時間を最適化する。
(6)固定費ダウン
電気代やガス代の契約プランを見直す。使っていないサブスクリプションのサービスを解約するなど、毎月無意識に出ていく固定費を削減する。
AIを壁打ち相手にしてアイデアを量産する
これら6つの視点が分かっても、一人で具体的なアイデアをたくさん出すのは意外と骨が折れるものです。そんな時におすすめなのが、ChatGPTやGeminiなどのAIを活用することです。
例えば、AIに次のように投げかけてみてください。
「私は個人経営のカフェのオーナーです。利益を改善するために、客単価アップ、客数アップ、リピート率向上、変動費ダウン、生産性向上、固定費ダウンの6つの視点で、明日からできる具体的なアイデアをそれぞれ5つずつ提案してください」
AIは文句も言わず、わずかな時間で多くのアイデアを出してくれます。もちろん全てが使えるわけではありませんが、「あ、その手があったか」という気づきを得るための優秀な壁打ち相手になってくれます。もっと、自分の店舗の詳細な情報(前提)を伝えれば、より精度の高いアイデアが出てくる可能性もあります。
数字に落とし込んでいく
売上高を構成するのは、多くの場合「客単価」×「客数」です。客数は「新規客」と「リピート客」に。さらにリピート客は「顧客数」と「購買頻度(来店頻度)」に分けられます。一方、客単価は「平均単価」と「買上点数」に分けられます。
この樹形図は、業種によって異なる場合がありますので、自社に合わせた形で分解します。【図3】

ギャップとなっている86万円を埋めるためのシミュレーションをしてみましょう。
このカフェの1,200万円の売上高は、平均客単価800円×15,000人(300日稼働で平均50人/日)だったとします。
原価率が変わらないと仮定すると、86万円の売上アップのための仮説の数式として、以下の例が考えられます。
客単価825円(25円アップ)×客数15,600人(600人アップ)≒1,286万円
仮説に基づいて具体的なアクションを考える
まず、客単価を25円アップするアクションを考えてみましょう。
例えば、価格が100円高いプレミアムメニューを考案し、4人に1人がプレミアムメニューをオーダーする。あるいは、1個100円のプチ菓子をレジ横に置いて、4人の1人買って貰えるようにプロモーションするなどが考えられそうです。
次に、客数600人アップは、300日稼働なら平均2人/日です。近隣へのポスティングや駅前でのチラシ配布で新規客を獲得する。あるいは、季節ごとの限定メニューを開発してSNSで告知をする、スタンプカードや回数券などで来店頻度を上げるなどが考えられそうです。
一方、強力な別のアプローチとして、「売上」にこだわらず、「粗利」を900万円(プラス60万円)稼げば良いという考え方もあります。少し乱暴な例えではありますが、「一律40円の値上げ」を実施しても客数が変わらなかった場合、売上高が60万円アップ(40円×15,000人)しても変動費(原価)は変わらず、粗利がそのまま60万円アップするということになります。【図4】

未来のパズルは経営の羅針盤
未来のお金のブロックパズルは、経営者が「会社をどうしていきたいか」という想いを形にしたものです。
売上のギャップに直面しても、6つの視点に分解して考えれば、打ち手は見つかります。一度描いたパズルは、日々の経営判断の頼もしい羅針盤となってくれます。
明日からできるスモールアクションとして、まずは紙を用意し、お金のブロックパズルで1年後や3年後会社の理想の「未来像」を描いてみてください。細かい計算は後回しで大丈夫です。
そこから先の逆算や、6つの視点での打ち手づくりを一人で進めるのが難しいと感じた時は、東京都よろず支援拠点にてぜひお手伝いをさせてください。