こんにちは、東京都よろず支援拠点のコーディネーター戸田正弘です。
今回は、会社が持続的に発展していく上で必要不可欠な組織の3要素についてお話しいたします。友人と共同で会社を設立したもののメンバーの意見の対立で早期に分裂したり、会社が一定の規模まで成長しても離職率が高く業績が停滞したり、事業承継後の後継者に社員が付いて来ず業績が下降してしまったり、人に起因する経営者の悩みは尽きることがありません。問題の原因を突き詰めていくと、組織に必要不可欠な3要素のいずれかが欠けていることが実に多いのです。
組織の問題に関するご相談を受けるときに、私が必ず持ち出す経営理論が、米国の著名な経営学者チェスター・バーナード(1886年~1961年、電話会社の社長でもあった)の「組織の3要素」です。下記がその概念図ですが、バーナードは公式組織を、「意識的に調整された2人以上の人々の活動と諸力のシステム」と定義しました。そして、組織の成立条件として、「共通目的」「貢献意欲」「コミュニケーション」の3要素を挙げ、どれか一つでも欠けると組織不全になると提唱しました。
出典:C.I.バーナード「新訳 経営者の条件」(ダイヤモンド社,1968)を基に筆者作成
野球やラグビー、駅伝などの強いスポーツチームの活躍の裏に、監督の組織運営の卓抜さがあることはよく報じられるところです。
共通目的
まず、強いスポーツチームは勝利に対する執念と情熱にゆるぎないものを感じます。会社であれば、経営理念やビジョンを明確にし、それを社員と共有することで「共通の目的」の下に結集する「公式組織」になるわけです。それが不明確なままであると、組織は単なる「集団」になってしまいます。友人同士で共同設立した会社が早期に分裂してしまうことが多いのは、目先のご都合を優先して、経営理念やビジョン、価値基準、活動方針などに関する話合いが不十分なままスタートした結果が多く見受けられます。組織がグラついたときは、社員と心を一つにできる経営理念になっているかどうか見直すことが求められます。
貢献意欲
次に貢献意欲ですが、その象徴的な表現例はラグビーの、one for all, all for one でしょう。また、野球で、チームの勝利のために、ホームランバッターが時に犠牲フライを打ったり、バントや四球を選ぶ自己犠牲の姿勢は、会社組織の運営においても望まれることです。それには、メンバーの責任と役割が明確で、自分の役割が目的達成にどのように貢献するか、社員が自覚していることが必要です。また、成果を共有し、貢献度を公平に評価する評価システムの構築と適切なフィードバックが求められます。
コミュニケーション
そして、コミュニケーションですが、最近はチームスポーツでも、成果を出すためには、トレーニング以上にミーティングが重視されているようです。監督の戦略やメンバーの貢献意欲が立派でも、それを全員が共有して、さらに深く内面化しなければ、チーム力が高まらないからです。
最近は、テレワークが浸透して、社員間のコミュニケーションが希薄になりがちです。また、社員を顧客企業に派遣し常駐させるような業態の会社は、社員の帰属意識が弱く、離職率が高止まりして企業文化を育成するのに苦労しています。
JALを再生した故稲盛氏は、巨大組織のコミュニケーションを活性化するために、キョーセラ名物のコンパ(ワイガヤのための懇親会)をJALで励行し、組織間の横連携を啓発しました。社内の風通しを良くし、部門間の垣根を超えた社員同士の助け合いを促進するために、経営者は他社の成功事例に学んだり、あらゆる創意工夫を凝らすことが求められます。
組織運営の問題で悩んでおられる方はぜひよろず支援拠点へ相談にお越しください。