こんにちは。東京都よろず支援拠点 コーディネーターの荒谷司聖です。
■なぜ「正しく説明しているのに通らない」のか
「値上げの理由はちゃんと説明している」
「数字も根拠も揃えている」
それでも通らない、というケースは少なくありません。このとき多くの方は「説明が足りない」と考えます。しかし実際には、問題はそこではないことが多いのです。結論から言うと、“相手の理解を置き去りにしている”可能性があります。
■自社の事情だけでは交渉にならない
値上げ交渉でよくあるパターンがあります。
- 原材料費が上がった
- 人件費が上がった
- 利益が出ない
これらを丁寧に説明する。しかし、相手の反応は鈍い。なぜか。
それは「相手の意思決定に影響していない」からです。相手にとって重要なのは、「それを受け入れる理由があるかどうか」です。つまり、自社の事情だけでは交渉は成立しません。
■交渉は「説得」ではなく「提案」
ここで視点を変える必要があります。価格交渉は説得ではありません。提案です。説得は「こちらの事情を理解してほしい」という姿勢です。一方で提案は「相手にとってのメリット」を提示します。
この差は非常に大きい。たとえば、「コストが上がったので上げてください」と「この条件なら御社にもメリットがあります」では、受け止め方がまったく変わります。交渉がうまくいく企業は、この視点に立っています。
■購買担当は「敵」ではない
もう一つ重要な前提があります。交渉相手である購買担当は、敵ではありません。彼らにも役割と評価軸があります。基本的には、「良いものを安く仕入れること」がミッションです。つまり、値上げをそのまま通すだけでは評価されません。だからこそ、こちらが理解すべきなのです。
- 上司にどう説明するのか
- どんな材料が必要なのか
- どこまでなら決裁できるのか
ここに配慮するかどうかで結果は大きく変わります。
■「相手の資料」を用意できているか
実務で差が出るポイントがあります。それは、“相手が社内で使える資料を出しているか”です。多くの企業は、「説明した」で終わってしまいます。しかし実際には、担当者は社内で説明しなければなりません。このとき、
- 根拠が整理されている
- 数字が分かりやすい
- 説明しやすい
こうした資料があるとどうなるか。担当者は動きやすくなります。結果として交渉も進みやすくなります。逆にこれがないと、担当者は動けません。つまり、交渉はその場だけで完結していないのです。
■相手のメリットをどう作るか
さらに踏み込むと、もう一段階あります。単なる「理解」ではなく、「相手のメリットを設計する」ことです。たとえば、
- 納期短縮で機会損失を減らせる
- 品質向上でクレームリスクが下がる
- 安定供給で業務が楽になる
価格以外の価値を組み込むことで、交渉は成立しやすくなります。ここが弱いと価格の話だけになります。そうなると、安いか高いかの勝負にしかなりません。
■よくある失敗パターン
現場でよく見かけるのは次のようなケースです。
- 自社努力(コスト削減)ばかり説明する
- 相手の事情を聞いていない
- 提案ではなくお願いになっている
特に多いのが、「頑張っていること」をアピールするだけの交渉です。しかし、努力は価値ではありません。価値は「相手にとってのメリット」です。ここを履き違えると、いくら説明しても伝わりません。
■交渉の質は「準備」で決まる
結局のところ、交渉の質は準備で決まります。
- 相手の立場を理解する
- 意思決定プロセスを想像する
- メリットを設計する
この3つをやるだけで、同じ内容でも結果が変わります。逆にここをやらずに臨むと、話がすれ違い続けます。そして「うちは値上げが通らない」という結論になります。
■一人で考えると視野が狭くなる
とはいえ、相手の立場まで想像するのは簡単ではありません。どうしても自社目線に偏りがちです。だからこそ、一人で抱え込まないことが重要です。
■次の一歩:よろず支援拠点の活用
東京都よろず支援拠点では、「どう伝えるか」ではなく「どう設計するか」から相談できます。
- 相手のメリットは何か
- どんな提案にすれば通るか
- 資料はどう作るか
こうした実務レベルの整理を一緒に行えます。交渉がうまくいかない理由の多くは、“理解不足”ではなく“設計不足”です。ぜひ一度、自社の交渉を見直してみてください。
第二回はこちら 値上げできる会社になる価格交渉術シリーズ 第3回 価格交渉は経営の仕事
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