こんにちは。東京都よろず支援拠点 コーディネーターの荒谷司聖です。
■「忙しいのに儲からない」の正体
「売上は伸びているのにお金が残らない」
「忙しくしているのに利益感覚がない」
こうした相談は非常に多くあります。現場では「仕事がある=良い状態」と捉えがちですが、実はそれだけでは判断できません。むしろ注意すべきは、「忙しいのに儲からない状態」が続いているときです。
これは単なる効率の問題ではなく、構造の問題である可能性が高いのです。
■売上だけを見ていると危険
ある会社の例です。
売上は毎年伸びており、一見すると順調でした。しかし数字を分解してみると、利益はむしろ減少していました。
原因は明確でした。
特定の取引先の仕事が増えてはいるものの、ほとんど利益が出ていなかったのです。中には原価割れに近い仕事も含まれていました。
つまり「働けば働くほど利益が減る」という状態に陥っていたのです。この状態を放置するとどうなるか。忙しさだけが増し、会社の体力は確実に削られていきます。現場は疲弊し、改善に向けた余力もなくなります。
■本当に見るべき数字は「粗利」
この問題の本質は、売上ではなく「利益の構造」です。
重要なのは、会社全体の売上ではなく、「どの取引先でどれだけ利益が出ているか」です。ここを見ないまま値上げ交渉に入っても、的外れな交渉になってしまいます。
まず押さえるべきなのは「粗利」です。売上から原価を引いた、最もシンプルな利益指標です。難しいことを考える必要はありません。
まずは取引先ごとに、
・売上はいくらか
・原価はいくらか
・粗利はいくらか
この3つを分解するだけで、見える景色は一変します。
■「儲かっている先」と「危ない先」を分ける
この分解をすると、はっきりとした傾向が見えてきます。
たとえば、売上は大きいが利益が薄い取引先。逆に、売上は小さいが利益率が高い取引先。あるいは、明らかに赤字に近い仕事。ここまで見えると、次に何をすべきかが明確になります。
値上げ交渉を優先すべき先はどこか。場合によっては取引の見直しが必要な先はどこか。経営判断の軸が一気に具体化します。
逆に、これをやらずに感覚で動くと、「声の大きい取引先」に振り回されることになります。本来優先すべき課題を見誤ってしまうのです。
■よくある誤解「細かく出せないから無理」
ここで多くの方がつまずくポイントがあります。
「正確な原価が出せない」
「工数まで追えていない」
こうした理由で分析を止めてしまうのです。しかし、最初から完璧である必要はありません。むしろ、ざっくりでも良いから把握することが重要です。材料費と外注費、人件費の感覚値でも構いません。「だいたいこれくらい」という水準を押さえるだけでも十分に意味があります。
精度は後から上げればいいのです。止まることの方がリスクです。
■交渉前にやるべき最低限の準備
価格交渉に入る前に、最低限やっておきたいことがあります。
・取引先別の売上を整理する
・ざっくりでも原価を把握する
・粗利の大小関係を確認する
この3つだけでも十分です。
ここまでやると、「なぜ値上げが必要か」が自分の中で整理されます。この状態で交渉に臨むと、言葉に説得力が出ます。逆にここを曖昧にしたままだと、「なんとなく上げたい」という印象になり、相手に主導権を握られます。
■利益は「結果」ではなく「設計」
利益は結果ではなく、設計できるものです。どの取引先で稼ぐのか。どこは戦略的に付き合うのか。どこは見直すのか。この整理なしに動くと、気づけば一番大事な部分が崩れていきます。
「忙しい=良い状態」という思い込みを一度疑ってみてください。
本当に評価すべきは、忙しさではなく利益です。
■一人でやろうとすると止まる
とはいえ、数字の分解は慣れていないと難しく感じます。特に「どこまで見れば十分なのか」が分からず、手が止まることも多いでしょう。そうした場合は、一人で抱え込まないことが重要です。
■次の一歩:よろず支援拠点の活用
東京都よろず支援拠点では、こうした「利益構造の見える化」から一緒に整理することができます。無料で、実務レベルでのアドバイスが受けられます。
どの取引先に問題があるのか。どこから手をつけるべきか。
そのまま交渉につながる整理まで落とし込めます。まずは主要な取引先3社で構いません。「売上」と「だいたいの原価」を並べてみてください。もし少しでも違和感が出たら、それが改善のスタートです。
第一回はこちら 値上げできる会社になる価格交渉術シリーズ 第1回 下請けが持つべきものと捨てるもの
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