こんにちは。東京都よろず支援拠点サブチーフコーディネーターの関義之です。
平成18年5月1日に会社法が施行され前は、会社を設立する場合には、組織形態として、株式会社のほか、有限会社が選択されていました。
会社法の施行に伴い新規に有限会社を設立することができなくなりましたが、従来の有限会社は、「特例有限会社」として残っています。
特例有限会社と通常の株式会社との主な違いについて下記サイトで解説していますのでご覧ください。
東京都中小企業診断士協会中央支部
「専門家コラム「株式会社と特例有限会社の違い」(2026年4月)」
https://www.rmc-chuo.jp/report/2026033002
一方で、会社法制定時に新しい組織形態として合同会社が創設され、株式会社ではなく、合同会社を選択する事業者が増えています。
その理由として、株式会社より設立コストが低く、また公証役場での定款の認証が不要であるなど設立手続が簡便である点が挙げられます。
合同会社は、出資者(社員)が株式会社の株主と同じく有限責任であり、ミニ株式会社のように思われがちですが、会社法上は、合名会社、合資会社と同じ持分会社(会社法第三編)に位置づけられ、株式会社(会社法第二編)とは異なる取り扱いが多くあります。
そこで、今回は、合同会社と株式会社の違いについて、合同会社の「社員」の取り扱いを中心に説明いたしますので、合同会社を選択する場合はご一読ください。
1 所有と経営の一致
株式会社と合同会社の大きな違いは、制度として、所有と経営が分離しているか、一致しているかにあります。
株式会社では、必須の機関として、株主総会と取締役があり(会社法326条1項)、取締役が業務執行や代表行為を行うため、所有と経営が分離しています(株主であるAさんが取締役に選任されれば結果として所有と経営を一致させることができますが、あくまで機関としては別です)。
これに対し合同会社では、機関を定めることは必須とされておらず、出資者たる社員がそのまま業務執行をし、かつ、代表行為も行うため、所有と経営が一致しています。
もっとも後述するように、業務執行や代表行為を行わない社員を決めたり、定款で社員総会のような会議体を設置することもできます。
2 業務執行社員
このように合同会社では、全社員が業務執行を行います(社員=業務執行社員、会社法590条1項)。
社員が二人以上いる場合には、業務は社員の過半数で決定します(同条2項)。ただし、合同会社の常務は、各社員が単独で行うことができます(同条3項本文)。
なお、合同会社は株式会社より広く定款自治が認められており、無制限ではありませんが、定款で自由に内部ルールを設定することができるようになっています。
前述の業務の決定方法も、総社員の同意を要するとするなど、定款で変更することができます(同条2項)。
また、定款に別段の定めを置くことにより、社員の中から、業務執行を行う業務執行社員を決めることができます(同法591条)。これにより業務執行権を有する社員と有しない社員に分かれます。
この業務執行社員が二人以上いる場合には、業務は、その業務執行社員の過半数で決定します(同条1項)。この決定方法も定款で変更することができます。
業務執行社員の決め方には次の方法があります。
- 定款に業務執行社員の氏名又は名称を直接定める。
- 定款に業務執行社員の選任方法に関する定めを置き、その定めに従って業務執行社員を選任する。
このように、基本的に、社員=業務執行社員であるため、業務執行社員には、株式会社の取締役と異なり、法令による任期の制限はありません。従って任期満了による役員変更登記が不要になります。
もっとも、定款で任期を定めることもできます。
なお、株式会社では、法人は株主になることはできますが、取締役になることはできません。一方で、合同会社では、法人は社員になることができ、その結果、業務執行社員にもなることができます。法人が業務執行社員になるときは、現実に業務を執行する自然人の職務執行者を選任する必要があります(同法598条1項)。
業務執行社員は、株式会社の取締役と同じく、善管注意義務や忠実義務を負い(同法593条1項、2項)、また、競業や利益相反取引が制限されています(同法594条、595条)。
競業避止義務や利益相反取引の制限は、株式会社の場合には、株主総会(取締役会設置会社であれば取締役会、同法356条1項、365条1項)の承認があれば許されますが、合同会社の場合には、前者は当該社員以外の社員の全員の承認(同法594条1項)、後者は当該社員以外の社員の過半数の承認(同法595条1項)が要件とされています。また、いずれも定款で別段の定めをすることができます。
3 代表社員
合同会社では、業務執行社員が代表行為を行います(会社法599条1項)。業務執行社員が二人以上いる場合には各自が代表します(同条2項)。
つまり、基本的には、社員=業務執行社員=代表社員の関係にあります。
業務執行権を有する社員と有しない社員に分けた場合には、業務執行社員のみ代表社員になります。
また、業務執行社員が二人以上いる場合には、次の方法で、業務執行社員の中から代表社員を決めることできます。業務執行社員ではない社員は代表社員になれません。
- 定款に代表社員の氏名又は名称を直接定める。
- 定款の定めに従って、業務執行社員の互選によって選定する。
これにより代表権を有する業務執行社員と、代表権を有しない業務執行社員に分かれます。
以上により、合同会社は、基本的には、所有と経営が一致しており、
社員=業務執行社員=代表社員
の関係にありますが、社員が複数人いる場合には、会社によって、
- 業務執行社員でも代表社員でもない、ただの社員
- 代表社員ではない業務執行社員
- 代表社員である業務執行社員
の組み合わせが考えられることになります。
そして、業務については原則として「業務執行社員」の過半数で決めますが、競業避止義務や利益相反取引の制限のように、他の「社員」の全員や過半数で決めるものもありますので、合同会社を設立する際には、社員としてだれに、何人、参加してもらうかや、各事項の決定方法について「定款」でどのように例外を定めるかということが、設立後の合同会社の円滑な運営のために、非常に重要になってくるということがいえます。
4 社員の加入
合同会社の社員になるにはどうしたらよいでしょうか。
設立時には、会社を設立するメンバーでだれが社員になるかを決定し、その社員になろうとする者が定款を作成して、その全員が署名又は記名押印(電子定款の場合には電子署名)をします(会社法575条)。
定款には、絶対的記載事項として、「社員の氏名又は名称及び住所」を記載します(同法576条1項4号)。
そして、社員になろうとする者は、定款の作成後、設立登記時までに、定款(「社員の出資の目的及びその価額」同項6号)で定めた出資金の全額を払い込み、又は金銭以外の財産を現物出資します(同法578条本文)。
なお、合同会社の場合には、株式会社とは異なり、現物出資に検査役の調査が不要とされています。
そして、設立登記をすることによって合同会社が成立し(同法579条)、定款に記載された者が社員となります。
なお、業務執行社員の氏名又は名称(同法914条6号)と代表社員の氏名又は名称及び住所(同法7号)は登記されますが、業務を執行しない社員は登記されません。
会社が成立した後に社員が加入するのは、次のような場合です。
①設立時と同じように、新たに出資して、社員として加入する(同法604条)
②既存の社員が持分の全部又は一部を他人に譲渡する(同法585条1項)
③既存の社員が死亡した場合又は合併により消滅した場合に、相続人その他の一般承継人が持分を承継する(同法608条)
②については他の社員(業務を執行しない社員の場合は業務執行社員)全員の承諾が必要となり、③については予め定款の定めが必要となりますが、事業承継の観点から後述します。
①の新たに出資して社員として加入する方法について少し解説します。
社員は定款の絶対的記載事項ですので、新しい社員の「社員の氏名又は名称及び住所」と「社員の出資の目的及びその価額」を変更します。
定款変更の手続は、総社員の同意が必要となりますので(同法637条)、社員が一人でも反対すると①の方法により新しい社員を加入させることができません。なお、定款変更の承認方法は、予め定款で別段の定めをしておくことが可能です。
この定款変更をしたとき社員の加入の効力が生じます(同法604条2項)。もっとも、新たに社員となろうとする者は、出資金の全額を払い込み、又は金銭以外の財産を現物出資するまでは社員になることができません(同法604条)。
新たに加入する社員が業務を執行しない社員となるか、業務執行社員となるか、代表社員になるかは、前述の手続によりこの時点で決めることになります。
そして、新たな社員の加入により、業務執行社員の加入、代表社員の加入、資本金の額の増加が生じるときはそれぞれ変更登記が必要になりますが(同法915条)、新たに加入した社員が業務を執行しない社員で、かつ、資本金の額が増加しないときには、登記は不要となります。
5 退社
次に退社について解説します。
退社とは、社員が持分の払戻しを受けて社員ではなくなることをいいます。
なお、合同会社では、社員は、社員の地位を維持したまま出資金等の払戻しを請求することもでき(会社法624条)、これを「出資の払戻し」として、退社による持分の払戻しとは区別しています。
退社には、①任意退社(同法606条)、②法定退社(同法607条)、③持分の差押債権者による退社(同法609条)などがあります。
①任意退社は、社員が自らの意思で退社する場合です。
円満に退社するケースもあれば、社員同士仲違いして任意退社を選択するケースもあります。
しかし、この任意退社は、簡単にできるものではなく、各社員は、事業年度の終了の時において退社をすることができ、かつ、各社員は、6か月前までに会社に退社の予告をしなければならないと定められています(合同会社の存続期間を定款で定めなかった場合又はある社員の終身の間合同会社が存続することを定款で定めた場合、同法606条1項)。
この任意退社の条件は定款で別段の定めをすることが可能です(同条2項)。
また、「やむを得ない事由」があるときは、定款の定めの有無にかかわらず、各社員はいつでも退社することができるとされています(同条3項)。
従って、他の社員全員の同意を得られないまま(後述の法定退社の「総社員の同意」)、すぐに退社したい場合には、この「やむを得ない事由」を満たすかどうかがポイントとなります。
②法定退社は、次のような事由(同法607条1項各号)に該当し、法律上当然に退社するという場合です。
一 定款で定めた事由の発生
二 総社員の同意
三 死亡
四 合併(合併により当該法人である社員が消滅する場合に限る。)
五 破産手続開始の決定
六 解散(前二号に掲げる事由によるものを除く。)
七 後見開始の審判を受けたこと。
八 除名
社員全員が同意すれば、「二 総社員の同意」により、時期を問わず、法定退社することができます。
「三 死亡」については後述します。
社員が、「七 後見開始の審判を受けた」場合、つまり、認知症などにより成年後見人をつけた場合には、法定退社になります。株式会社の場合には、後見開始の審判を受けても、「株主」としての地位を失うわけではありません(ただし、委任契約の終了事由になっていますので、「取締役」は退任となります(民法653条3号))。社員として残したい理由があれば、定款で法定退社事由から排除することができます(5号から7号までは定款で排除できます。同条2項)。逆に、後見開始だけではなく、保佐開始や補助開始の審判を受けたことを「一 定款で定めた事由」として定めることも可能です。
任意退社でも、法定退社でも、社員が退社した場合、定款変更の手続を行わなくても、退社した社員にかかる定款の定めを廃止する定款変更をしたものとみなされます(同法610条)。
また、退社した社員は、その持分の払戻しを受けることができます(同法611条)。この払戻しの際に、債権者保護手続が必要になる場合があります(同法635条など)。
6 持分の譲渡
合同会社を事業承継する場合を考えます。
事業承継には、親族や従業員に承継したり、M&Aにより第三者に売却するケースがあります。
まず、M&Aにより第三者に売却するケースですが、株式会社の株式譲渡のように、既存の社員が持分の全部又は一部を他人に譲渡する(会社法585条1項)という方法で第三者を社員として加入させることができます(前述4②)
なお、譲渡人である社員は、持分の全部を譲渡すると退社しますが、一部を譲渡した場合には社員の地位は残りますので、「一部」を「既存社員以外」に譲渡した場合には、社員数が増え、議決権割合が変わります。
持分を譲渡するには、当事者間で持分の譲渡契約を締結します。
持分譲渡には、他の社員(業務を執行しない社員の場合には、業務執行社員)全員の承諾が必要となります(同項、同条2項)。
また、定款変更が必要となり、総社員(業務を執行しない社員の場合には、業務執行社員全員)の同意をもって行います(同法637条、585条3項)。
なお、持分譲渡に関して定款で別段の定めをすることができます(同法585条4項)。例えば、承認の要件を変更したり、持分の譲渡は一切できないと定めることもできると解されています。
譲渡人である社員が、定款等に基づき定められた業務執行社員や代表社員である場合、持分の「全部」を譲渡しても、譲り受けた社員は業務執行社員や代表社員の地位は承継されません。だれが業務執行社員や代表社員になるかを検討して、必要な手続を確認してください。なお、「一部」の譲渡の場合には、譲渡人である社員の業務執行社員や代表社員の地位に影響はありません。
持分の譲渡により業務執行社員や代表社員に変動(退社や加入)がある場合には、変更登記が必要になります(同法915条)。
M&Aの場合には、買い手が全社員の持分の譲渡を希望するケースが多いと思いますので、その場合には、一人でも応じなければM&Aの実現は難しくなります。
7 社員の相続
次に、親族である子どもに相続させるケースですが、既存の社員が死亡した場合に相続人が持分を承継する(会社法608条)という方法で子どもを社員として加入させます(前述4③)。
社員が「死亡」することは、法定退社事由となっています(同法607条1項3号)。
従って、合同会社の社員の地位は、株式会社の株式と異なり、何も手当をしなければ、相続の対象となりませんので注意が必要です。
法定退社となった場合には、相続人は持分の払戻しを受けることができます。このとき総社員の同意があれば、相続人は、払戻しを受けた出資金等をそのまま出資して、新たに社員として加入することもできますが(前述4①)、社員が全員同意してくれるとは限りません。
そのため、確実に子どもに相続させたい場合には、その社員が死亡した場合における当該社員の相続人が当該社員の持分を承継する旨を定款で定めておく必要があります(同法608条1項)。
この定款の定めがあれば、相続人が持分を承継したときに、定款変更したとみなされます(同条3項)。
なお、死亡した社員が定款等に基づき定められた業務執行社員や代表社員である場合の扱いは、前述の持分の譲渡の場合と同じです。
また、社員の相続により業務執行社員や代表社員に変動(退社や加入)がある場合には、変更登記が必要になります(同法915条)。
8 定款自治
前述したように、合同会社は株式会社より広く定款自治が認められており、無制限ではありませんが、定款で自由に内部ルールを設定することができるようになっています。
しかし、合同会社の場合には、設立時に定款の認証が不要なため、特段内部ルールについて検討することなく、一般的なひな形を用いて定款を作成してしまうことも多いかと思います。
株式会社とは異なる取扱いであることを知らずに合同会社を設立してしまい、想定どおりの会社運営ができずに悩むケースもありますので、合同会社を設立する際には、相続まで意識して、どのような内容の定款にすべきかよく検討するとよいでしょう。
また、この解説を読み、何だか合同会社って複雑だなあと感じた方は、合同会社ではなく、株式会社を選択してもよいでしょう。
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